やたらと朝が慌ただしく、ギリギリの時間の出勤になってしまった。
午前中外来、午後からは病棟業務に検査など。
夕方、仕事を終えて、どうしようかと思いつつも、映画『ブリッジ・オブ・スパイ』を観に行くことにした。
ちょうど夕方からの回に間に合いそうだったのと、来週、再来週と、気乗りしない用事が詰まっていて、映画に行く余裕がなさそうだったので、今日のうちに。
最初、画面揺れにちょっと気持ち悪くなるところがあったのだが、トム・ハンクスが演じるソ連のスパイを弁護するドノヴァンのタフ・ネゴシエーターっぷりにすっかり魅せられてしまった。
映画を1本観れば、どんなすぐれた作品でも、「ここはこうしたほうが良かったのでは」「あの場面は冗長だった」というところがあるのだけれど、この『ブリッジ・オブ・スパイ』は、2時間21分、まったく隙を感じなかったのだよなあ。
この先、どうなるのだろう?というエンターテインメント性と、移り気な人々の無責任な「愛国心」や「熱狂」に「アメリカ人として、人間としての規律」で立ち向かうというメッセージ性が両立されている、本当に素晴らしい映画だと思う。
この「困っている人、苦しんでいる人を『国のためという言い訳をして』見捨てられない男」ドノヴァンを、それを演じるのにもっともふさわしい俳優、トム・ハンクスが演じ、それをスピルバーグが監督するというのは、まさにドリームタッグと呼ぶにふさわしい。
ソ連のスパイの可能性が高いという段階で、「アメリカの敵だ」「死刑にしろ」と被告人に罵声を浴びせるばかりか、その弁護をする人間にまで脅迫や恫喝を行なったり、守秘義務を破らせようとする人々をみると、なんてひどい連中なんだ、と感じずにはいられない。
だが、彼らは、凶悪事件の被告の弁護人に対して、「なんであんなヤツの弁護なんかするんだ!」とテレビ画面越しに憤りをぶつけていた僕の姿でもあるのだよなあ。
どんな事件の犯人であっても、「可能な限りの弁護を受ける権利がある」ほうが、「まともに裁判も行なわれずに吊るされる」より、まともな社会なのに。
ドノヴァンは、「正義を押し付ける人」としてではなくて、「善悪を自分で決めようとせず、自分の仕事だと決めたことを、ひたすら忠実にやり遂げようとする人」なのだと思う。
観終えて、ジッドの言葉「私はいつも真の栄誉をかくし持つ人間を書きたいと思っている」というのを思い出した。こうの史代さんが紹介していた言葉だ。
スピルバーグは、こういう「ライ麦畑のキャッチャー」みたいな人が好きで、そういう人たちのことをみんなに知ってもらいたいのだろうな。
『ブリッジ・オブ・スパイ』のような良い映画を観ると、なんだか人生というゲームで、偶然ボーナスポイントをもらったような気がする。
帰宅し、寒いなかお風呂に入り、25時に就寝。
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