じっぽ当直日誌・スーパーマイルド@はてな

『さるさる日記』から続く、中年内科医の日常日記。これまでの分はこちら。http://touchoku.jugem.jp

『ワンピース歌舞伎』を観てきたよ。

次男、保育所に送っていく途中、『きかんしゃトーマス』の絵本を落とし、大号泣。
アンパンマン』と『トーマス』は長男も大好きで、最近は喧嘩ばっかりしている(というか、長男が次男のちょっかいばかり出している)ふたりなのだが、やっぱり兄弟なのだなあ、などと考えてしまう。
実際は、あの世代の子ども向けのメジャーコンテンツなので、みんな好きなんだろうけどさ。

午前中外来、午後から病棟業務など。
仕事を終えて、早々に『ワンピース歌舞伎』を観に博多座へ。
けっこうチケット代も高いし、僕は歌舞伎も観たことがなく、『ワンピース』もそんなに熱心な読者じゃないというか、たまに子どもと一緒にアニメを観るくらいなのだが、「面白い」という評判を聞いて、観ておきたかったのだ。
そもそも、こういう機会でもないと、歌舞伎にアプローチすることも、一生ないかもな、なんて思ったりもして。

結論、楽しかった、すごかった、生きててよかった。
間に2回の休憩を挟む3幕、休憩時間まであわせると、4時間半近い舞台なのだが、時間が経つのを忘れるというのは、こういうことなのだなあ。
歌舞伎というと、観賞の作法とか「○○屋!」みたいな掛け声とか、いろんなルールがあって敷居が高いイメージがあったのだけれど、制服姿の女子高生や小学生も観にきていて、みんな第二幕の大スペクタルが終わったあと、上気しながら、隣の人に何か話しかけずにはいられないようだった。
僕も隣にいた市川猿之助ファンという高齢のお嬢様(もちろん初対面)と「すごかったですね!」と言葉を交わしてしまったくらいだ。
ルフィの「ゴム人間」の表現とか、歌舞伎でどうやるのか、と思ったら、限りなく肉体を使った表現とテクノロジーを駆使した手法が併用されていて、すごく感心してしまった。
歌舞伎という「制約」のなかでの表現を考え抜くことで生まれた「新しさ」。
そして、なによりも、観客を楽しませてみせる、という矜持。
演じている人たちも、観ている人たちも、とにかく楽しそうだった。いや、楽しかった。
ここまでやるのかよ!って、ツッコミながら、みんなニコニコしていた。

今回は小学校2年生の長男は、まだわからないだろう、ということで連れてこなかったのだが、あと何年か経って、再演されることがあったら、ぜひ長男にこれを見せてやりたい。
どんな顔をして観るか、その横で見ていたい。
エンターテインメントって、「人生のうちのほんの一瞬の喜び」なのかもしれないけれど、この瞬間のために、もうしばらく生きていっても良いかな、と思う。
猿之助さんをはじめとする出演者たちが、幕間に熊本の地震の募金を呼びかけていたのだけれど、観客たちがみんな笑顔でそれに応じていたのが印象的だった。
自然災害はとても不幸なことだし、当事者が笑顔になれるわけがない。
だが、いま、ほんの一瞬でも幸せを感じている人が、それを少しでもお裾分けしてあげたい、と募金をするのは、けっして悪いことじゃないと感じた。
みんなが沈鬱な顔をしているだけが「支える」ことじゃないはずだ。
いま、苦しんでいる人たちにも、いつか、この『ワンピース歌舞伎』を見てもらいたい。
カーテンコールの最後に、若い男性が猿之助さんと一緒にステージに上がってきて、「うわあああっ!」と客席が大騒ぎに。「誰?誰?」と思いつつ、他の人に聞くこともできず、聞き耳を立てていたのだが、主題歌をつくった『ゆず』の北川さんだったらしい。
僕の母親世代の人たちは、みんな気づいていたというのに!

こういう夜は、飲みながら、感想とか語り合えたらいいのになあ、なんて思うのだが、明日も仕事なので、酎ハイを1本だけ空けて、25時に就寝。