じっぽ当直日誌・スーパーマイルド@はてな

『さるさる日記』から続く、中年内科医の日常日記。これまでの分はこちら。http://touchoku.jugem.jp

新海誠監督の『秒速5センチメートル』を予習のために観て、感心してしまった。

いろいろあって、家とアパートのあいだを2往復。
結局、探していたものは見つかったので助かった。

長男の夏休みの宿題は相変わらずかなりピンチの状態なのだが、本人はあまり慌ててはいない様子。
まあ、僕も宿題に関しては、最後のほうに一生懸命やるんだけれど、結局間に合わなくて8月31日は開き直って遊んでいることも多かったからなあ。子どもの前では言えないが。

夜、少し飲んで寝る前に新海誠監督の『秒速5センチメートル』を観た。
前に観たことがあったようななかったような、なのだけれど、いまの心境に恋愛ものはキツいな……と思いつつも話題の『君の名は。』の予習のつもりで。
だいたいさ、中学生の純愛ものなんてさ、と、かなりやさぐれつつ、さらに酔っ払っての視聴だったのだが、観てみると最初の『桜花抄』から、すっかりハマってしまった。
というかこれ、「雪で電車が遅れた」ってだけの話なんだよね。そもそも土日に約束しろよ、とも思うのだが、こういう、自分にはどうしようもない状況で、誰かを待たせているときのもどかしさ、みたいなものが、切実に伝わってくるんだよなあ、これ。

僕などは、つねづね、何か書きたいけれど、書けるようなドラマチックな話を思いつかない、と嘆いているのだが、本当に優れたクリエイターというのは、日常に転がっている当たり前のようなことを材料に、ちゃんと「作品」をつくりあげてしまう。
太宰治の『親友交観』という短編があるのだが、これは「感じの悪い知人と一緒に酒を飲んだ話」でしかないのに面白いし、乙一さんは16歳のときに、夏祭りと子どもたち、という材料だけで『夏と花火と私の死体』を書きあげた。当時、乙一さんは久留米高専の学生だったそうで、僕もその学校の前、通ったことある!とか、思ってしまった。
「書く材料がない」というのは、「私は見る目、あるいは料理をする腕がありません」ってことなんだよな、悲しいけれど。
秒速5センチメートル』は、「ありきたり」のように感じる話でも、キッチリ細部まで描くと、これだけの作品になるのだな、と感心する作品だった。
結局のところ、純愛なんていうのは、成就しないからこそ美しい。長く続くと、それは「生活」になってしまうから。
「こんな話、現実にあるわけないだろ」というのは、フィクションに対する褒め言葉でもある。


DVDの特典で、新海誠監督が、ある役柄の声優さんについて、「この人の声は、最初のオーディションでは、ちょっと違うと思ったんですけど……なんとなく気になっていて、後から考え直してキャスティングした」と、かなり率直な発言をしていたのが面白かったのだが、細部にこだわりがある人のようで、この人を納得させるのは難しそうだなあ。
君の名は。』の主人公二人の声は、オーディションしたのだろうか。

26時くらいに就寝。

秒速5センチメートル [Blu-ray]

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