昼下がりまで出かけていたのだが、車の中で聴いていたNHK-FMの「今日は一日“失恋ソング”三昧2018」が楽しくて、家に帰っても合間をみて聴き続けていた。
僕は朝の情報番組はほとんど観ないし、有働由美子さんがどうしてこんなに人気があるのか今までよくわからなかったのだけれど、この番組を聴いていると、有働さんの落ち着いて聴ける声質と自分自身のことも相手についても率直な言葉で話している感じがして、こういうことなのか、とわかったような気がした。もちろん、司会者としての仕事の範囲、というのはあるのだけれど、有働さんは、仕事の枠をこえて、話している相手から何かを引き出すのが面白くてたまらないと思っている人なのではなかろうか。
話のなかで、「以前はそうじゃなかったけれど、最近は、映画とか本とかドラマとか他人のことではよく涙が出るのに、自分のことでは泣けなくなってしまった」と仰っていて、ああ、僕もちょうどいま、そういう感じなんです、と思ったのだ。
番組の後半は、山下達郎さんがサプライズで生歌を披露してくれて、これは本当にすごい放送だよなあ、と。山下さんがこんなに屈託なく楽しそうに喋っているのは珍しいのではなかろうか。有働さんは、「山下さんというより、コアな山下さんのファンが怖い」と仰っていて、それに対して、「いや、僕のファンも年とともにすっかり丸くなってきて」と山下さんが返す。
それにしても、山下さんの生歌、ラジカセの音にラジオのトーク用のマイクであのクオリティって、凄すぎる。まさに神ラジオ。
あと、山下達郎さんの『GET BACK IN LOVE』が「失恋ソング」かどうか、という話題も面白かった。僕は好きな人が去っていった男の未練が歌われている、もう手遅れなんだろうな、とずっと解釈していたのだが、山下さん自身は「終わってしまった恋の歌、というわけじゃなくて、これからまた取り戻そうとしている、その可能性を信じている男の歌なのだ」とつくった側の意図を話しておられた。そして、「あくまでもこれは男の側からの歌で、この歌には、女性側からの反応はまったく入っていないでしょ」とも。
リスナーは、僕や有働さんのように「終わってていまったことに対する男の未練ソング」だと思っていた人と、これからやりなおそうとしている歌だと解釈していた人が半分半分、だったのだけれど。
山下達郎さんは「歌というのは、こうして世の中に出てしまえば、いろんなふうに解釈されるのが宿命で、それはつくった側も強制できるものじゃないから」と面白そうに語っていた。
最後に『クリスマス・イブ』で締めて、まさに大団円。
「失恋」というのは、暗い気分になりそうなテーマだな、と思っていたのだけれど、ラジオって面白いな、と久々に興奮できる番組だった。
こういうのを有料でストリーミング配信とか、iPhoneでいつでも聴けるようにしてくれないものだろうか。まあ、そうなると曲の権利とかが絡んでくるのかな……でも、少々値が張ってもいいから、この番組、また聴きたいよなあ。
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