じっぽ当直日誌・スーパーマイルド@はてな

『さるさる日記』から続く、中年内科医の日常日記。これまでの分はこちら。http://touchoku.jugem.jp

たぶん、こういうのが、これまでの日本代表にはなかった「世界水準のサッカー」なのだと思う。

 午前中は車検に出かけた。
 けっこういろいろ交換しなければならないところがあって(タイヤまで……)、かなりの出費に。見積もりをみて、聞いてないよ……という感じではあったのだが、交換しないと車検に通らない、ということなら致し方なし。しかし、稼いでも稼いでも、なかなか貯金とかできないというか、ちょっと貯まってきたと思ったら、トラブルや急な出費で、片っ端から吐き出してしまうよなあ。

 カープマツダスタジアムで巨人戦。巨人の先発は菅野投手で、カープは高橋昂也。昂也、ものすごく期待しているのだが、これまではなかなか結果が出ておらず、今日も相手が相手だけに、まあ、菅野の胸を借りて成長してくれ、と思っていた。
 ところが、2点先制されたものの、5回の裏に野間の3ランで逆転し、リリーフ陣も踏ん張って、4−2でカープの勝ち。6回2失点の高橋昂也は、プロ初勝利をあげた。
 勝てるときというのは、こんなにもうまくいくものなのか。しかも、相手は菅野だぞ。

 夜、ワールドカップのグループリーグ最終戦、日本代表対ポーランド代表戦を観た。引き分けでも決勝トーナメント進出が決まる試合で、日本代表は前の試合からスタメンを6人も替えてきた。コンディションの問題だったのか、決勝トーナメントを見据えての温存策なのか。
 いずれにしても、西野監督は、思い切った采配をふるう監督だよなあ。
 もし3戦目で負けて予選敗退、ということになれば、なんでここまで2試合うまくいっていたメンバーを入れ替えたのか、と批判されるのは間違いない。
 これまでと同じのほうが、言い訳はしやすいはずだ。

 前半は0−0の同点で終了し、引き分けでも良い日本としては、プラン通りの試合展開にみえた。ポーランドも予選敗退が決まってしまっているので、モチベーションは高くなさそう。まあ、このまま0−0で終わりでもいいかな、と思っていたのだが、後半14分に相手のフリーキックから失点。その後も、なかなか決定的なチャンスがつくれない時間が続いていた。コロンビア対セネガルは、0−0の同点。このまま試合が終わると、コロンビアとセネガルが決勝トーナメントに進出することになる。日本代表の攻撃をみていたら、これはもう、コロンビア対セネガルの試合のほうが、日本の運命を左右しそうだ、でも、この状況では、お互いに忖度して引き分け狙いっぽい雰囲気になっているのでは……とチャンネルを替えてみたのだが、真剣に勝負していて一安心。だが、このままでは……と思ったいたところ、後半29分にコロンビアが先制し、1−0に。
 今度は、このままなら、日本代表が2位通過で、セネガルが落ちる、という状況になった。
 そこからの日本対ポーランド戦は、「談合タイム」に突入。
 決勝トーナメント進出の可能性がなく、最後にせめて1つは勝ちたいポーランドと、この試合には負けても、1点差負けなら、このままセネガルが負ければ決勝トーナメントに進める日本は、「現状維持で試合を終わらせる」ということで、お互いの利益が一致したのだ。ゆっくりとパスを回す日本代表と、遅延行為で反則をとられない程度にボールを追い駆けるポーランド代表。それは、とても不思議な時間だった。両チームは、このまま終わることを望んでいて、暗黙の諒解として、たぶん、そういう結末になるのだろう。それでも、こんなにヒリヒリするものなのか。

 もしセネガルが追いつけば、状況は全く違ってくる。
 場内は大ブーイング。日本は「このままだと、この試合に負ける」にもかかわらず、勝ちにはいかず、この点差を守ることを優先した。どんな状況でも全力プレー、大量リードしていても「積極的に!点を取りにいかなきゃ!」と言われる日本代表。
 選手たちだって、負けているのに時間稼ぎをするのは、本意ではなかったはず。それでも、ワールドカップの決勝トーナメントに進出する可能性をもっとも高くするため、大ブーイングにさらされながらも、試合終了まで談合プレーを徹底したのだ。
 もしかしたら、最後の最後にセネガルが追いついて、というパターンなのでは……と悪い予感がしていたのだけれど、結局、そのまま日本対ポーランドも、コロンビア対セネガルも試合終了。フェアプレーポイント、というファウルの数の差で、日本代表が2位で決勝トーナメントに進んだ。
 試合が始まる前までは、ここまでグループリーグ1位だし、コロンビアとセネガルが直接対決するなか、モチベーションが下がっているであろうポーランド戦ならいけるだろう、と思っていたのに、結果的には、薄氷を踏むトーナメント進出となった。
 いやほんと、初戦でいきなりPKをくれて、ポーランドセネガルに勝ってくれたコロンビア様々だったな……終わってみれば、序盤にすごいハンデをもらったコロンビアになんとか勝っただけともいえる。

 僕は、「常に全力投球、真剣勝負!」という義務を背負わされている日本代表チームが、ここまでやって勝ちたい(というか、決勝トーナメントに進出したい)のがワールドカップなんだな、とあらためてこの大会の重さを思い知らされたし、こんな「つまらない試合」のなかで、少しでも上にいくためなりふり構わず談合プレーを続けた選手たちに感動した。僕はこういう、逆境でプライドを捨ててでも自分の役割を果たそうとする人たちに弱いのだ。
 西野監督は「日本代表が同点に追いつく可能性」よりも「コロンビアがこのままセネガルに勝ちきる可能性」に賭けた。まさに他力本願だけれど、それが、おそらくもっとも確率が高い選択肢だったのだ。批判する人がいることも承知の上で、選手たちは「結果」を求めて、賭けに勝った。決勝トーナメント進出を果たしたのだ。
 たぶん、こういうのが、これまでの日本にはなかった(というか、そこまでして結果を出そうとうすることが許されなかった)「世界水準のサッカー」なのだと思う。よくガマンしたよなあ、選手も、監督も。スタジアムの観客は、「納得いかない試合」としてブーイングをする権利があるよねこれは。でも、ブーイングされるような「狡猾さ」こそ、これまでの日本代表に欠けていたのだ、たぶん。