じっぽ当直日誌・スーパーマイルド@はてな

『さるさる日記』から続く、中年内科医の日常日記。これまでの分はこちら。http://touchoku.jugem.jp

『アクアマリンふくしま』は、「復興途上の難所にいる」と感じる水族館だった。

 朝から半日仕事の会合に出席して、とりあえず解放された。
 午後から常磐線の特急に乗り、いわき方面へ。
 水族館好きとしては、一度は行ってみたかった『アクアマリンふくしま』へ。
 特急で品川から2時間+現地でもバス+徒歩で30分くらい。近くにイオンモール小名浜があったのだが、モール内に入ると、ホッとするくらい僕にも馴染み深いイオンモールだった。もちろん、九州ではあまり見ない店も入ってはいるけれど。
 ただ、駐車場や入り口に「津波が来た際には、この場所に向かって避難してください」という看板や表示がたくさんあって、それはもう、これからずっと呼び掛けられつづけるのだろうし、現地の人たちも、こういうのを見るたびに、思い出さずにはいられないのだろうな。

 『アクアマリンふくしま』は、僕がこれまでに行った水族館と比べると、屋外を歩いて見てまわる展示が多くて、少し湿気は多いけれど、爽やかな風が吹くいまの季節には心地よい展示がされていた。
 途中、生きたカナヘビがケースの中で元気よくウネウネしているのを見たときには「ゲッ」と思わず声をあげてしまったのだけれど。本当に、ヘビだけは、いくつになっても慣れないというか、生理的に受けつけない存在なんだよなあ。飼っている人とか、本当にすごいと思う。同じ部屋にヘビがいるというだけで、どんなに頑丈なケースに入っていたとしても、僕はたぶん眠れない。
 ただ、水族館としてのアクアマリンふくしまは、現状だと、一度行けば満足、としか言いようがない。子どもと一緒に釣り堀体験をするのなら別だけれど。
 なんだか館内から誰か拷問でもされているのではないかと思うほどのうめき声が聞こえてきたのだが、その正体がトドの咆哮だった、というのと、ナメダンゴという魚がかわいかったくらい。
 うーむ、頑張っている、工夫しているのはわかるのだけれども、ジンベエザメがいたり、超大型の水槽があったり、タカアシガニやクラゲの展示でも、もっと幻想的なムードで盛り上げていたり、熱帯の水槽でもピラルクとかアロワナがたくさんいたりする他の水族館に比べると、セールスポイントがないなあ、というのが正直なところだ。良質の絵を集めているのだろうけれど、看板になる作品がない美術展みたいな感じ。集客力というのは、平均点じゃなくて、「これを見たい」と思わせるような何かが大きいのではないかと、それなりの数の施設や展覧会をみてきて思う。


ホテルに帰って、アクアマリンふくしまのことを検索してみたのだが、僕が思っていた以上に、東日本大震災の被害が大きかったことを知った。


www.divenet.jp


あの震災で、9割の生き物が死んでしまったのか……

水族館の生き物はどんどん入れ替わっていくのが宿命とはいえ、一度に9割の生き物を失ってしまうというのは、施設の損傷など、さまざまなリスクを負ってしまったことも含めれば、ゼロから、というより、マイナスからに近いスタートだったにちがいない。
あれから7年半で、やっとここまできた、というのが現状なのだろう。
応援したいよなあ、でも、もっと近場に魅力的な水族館がたくさんある東京や遠距離の人たちに「ここまで来てお金を落として!」と自信を持って言えるほど、現状で、水族館としての魅力があるかというと……


「復興」が進んでいると世の中では持て囃されるけれども、そこから先は、被害を受けていない地域との競争もある。そうなると、並大抵のことではやっていけない。大きな災害の直後は、みんな、「助けるつもりで」買ったり来たりしてくれる。だが、その熱意は、そんなに長く続くものではない。そろそろ大丈夫だろう、と補助金は出なくなり、みんなが他所と「純粋な比較」をはじめるようになる。
 
 アクアマリンふくしまは、まさに、そういう「復興途上の難所にいる」と感じる水族館だった。


 ぼんやりと車窓からの景色を眺めながら帰ってきたのだが、人身事故で特急が30分遅延。まだ東京で2日目なのに、すでに2回も人身事故での遅延の影響を受けてしまった。公共交通機関は車よりも時間に正確、というイメージは、東京のような大都会では、かえって通用しないのだな。いや、車のほうが、もっと読めないということか。


 明日は帰るので、今日はおとなしくホテルに戻ってテレビやYouTubeを眺めて寝た。

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