じっぽ当直日誌・スーパーマイルド@はてな

『さるさる日記』から続く、中年内科医の日常日記。これまでの分はこちら。http://touchoku.jugem.jp

まさか、あの長野久義選手をカープの一員として応援することになるとは……

 仕事そのものは1月4日から始まっていたのだけれど、金曜と土曜半日で、また日曜日だったので、気分的には、今日から本格始動、そして憂鬱な日々のリスタートでもある。

 外来を終えて、病棟の仕事をひととおり済ませて長男を迎えに行って帰宅し、ネットのニュースをみていたら、カープがFAの人的補償に選んだのが長野久義選手だというのをみて驚いた。第一報は東京スポーツだったので、どこかに小さく「長野久義……か?」とか書いてあるんじゃないか、「飛ばし」じゃないか、発表は10日くらいになると言っていたし、と疑っていたのだが、他メディアでも続々と報じられていった。
 内海投手が西武相手のプロテクトから外れていたことにも驚いたけれど、長野選手もプロテクトされていなかったのか……
 近年は成績が落ちてはいたし、もう34歳ということや2億円を超える高年俸もあって、カープは手を出してこないだろう、と思っていたのだろうか。それとも、巨人としては、若手を取られないための「撒き餌」としてこの功労者を手放すことを覚悟していたのか。
 巨人にしか入団しない、と2つの球団の指名を蹴って、ようやく巨人入りした経緯もあるし、生え抜きの人気選手で、外野のレギュラー格でもあった。ネタとしてはありでも、まさか本当にプロテクト外にするとは。カープはよっぽどお金がないと見くびられていたのかもしれないなあ。
 しかし、あの巨人の長野か……と、複雑な心境ではあった。
 入団の経緯から、僕は長野選手は大嫌いだったのだが、何年か前に、今村投手が長野選手の頭部にぶつけてしまった際に、お見舞いに行った今村投手に「お前のほうこそ、大丈夫か?」と気遣う言葉をかけてくれた、というのを知って、嫌い、という感情は薄れていたのだ。というか、嫌いなチームの選手であっても、野球選手として、人間としての器の大きさは認めざるをえなかった。
 そして、今回の人的補償についてのコメントは、長野選手にとっては望んだ移籍ではないであろうにもかかわらず、カープファンの僕にとっては「これは完璧だ……」と唸らずにはいられなかった。

「3連覇している強い広島カープに選んでいただけたことは選手冥利(みょうり)に尽きます。自分のことを必要としていただけることは光栄なことで、少しでもチームの勝利に貢献できるように精いっぱい頑張ります。巨人では最高のチームメートに恵まれ、球団スタッフ、フロントのみなさんの支えのおかげでここまで頑張ることができました。また、9年間応援してくださったジャイアンツファンの皆様のおかげで苦しいことも乗り越えることが出来ました。ありがとうございました。ジャイアンツと対戦することを楽しみにしています」

 第一報では、本当にカープに来るのだろうか……と不安もあったのだが、コメントでは「選手冥利に尽きる」とまで言ってくれ、巨人への感謝を述べつつも、未練がましい言葉はなく、「対戦を楽しみにしています」と締めていた。
 ああ、この人は、「プロ」なのだな、と、正直、感動してしまった。
 まさか長野選手をカープの一員として応援することになるとは……ファンの人生というのも、わからないものだ。
 言えることは、長野選手の「覚悟」は伝わってきたし、僕も応援する心の準備ができた、ということだ。
 ……とか言っていたら、来年、FA権を行使して、巨人に戻っちゃうかもしれないけれど、それはそれで、また人的補償もお金ももらえるし。
 長野選手の内心はわからないけれど、プロ野球選手として経験を積んでいくうちに、少なくとも、「巨人じゃないと絶対に嫌」だった入団前とは、心境の変化があったのだろうとは思う。入団時は無名で、FAでファンを振り回し、出来レースで大金を稼いでウハウハ、なんて思っていなかったであろう選手が銭ゲバ化して出ていき、その一方で、入団時には広島なんて歯牙にもかけなかったであろうエリートが、「選手冥利に尽きる」とやってくる。これもまた人生。

 菊池はメジャーリーグへのポスティング移籍を直訴し、鈴木誠也選手も「巨人のユニフォームが恰好いいと思う」と発言していて、「どうせみんな出ていくんだろ、あープロ野球なんてつまんない、もう卒業しよう」と思っていたのだが、カープでの長野選手を見届けたい、という心境になってきた。
 何にしても、良いことばかりではないけれど、悪いことばかりでもないのだ、たぶん。


るるぶ長野 善光寺 上田 戸隠 小布施 (国内シリーズ)

るるぶ長野 善光寺 上田 戸隠 小布施 (国内シリーズ)