平日休み。
少し体調も良くなったので、郵便局で用事を済ませ、朝から映画『グリーンブック』を観に行った。
黒人の天才ピアニストと、彼の南部への演奏旅行に「トラブル解決のスペシャリスト」として雇われた白人のクラブ用心棒とが、一緒に旅をするうちに、お互いを理解し、打ち解けていく様子を描いた作品なのだが、観終えて、「差別」がテーマのはずなのに、ものすごく後味が良い「すばらしい映画!」だったことに驚いた。これはアカデミー作品賞も納得だなあ、などと思いながら家路についたのだが、あらためて考えてみると、このテーマで、こんなにのどごしが良い、ということそのものが、この映画の「問題点」であるのかもしれない。
ただ、劇中で僕がいちばん印象に残ったのは、天才ピアニスト、ドン・シャーリーが黒人であるという理由で差別をされたシーンではなく、南部の牧場を通った際に、農場の黒人労働者たちがなんともいえない表情で彼を見つめるシーンだった。
ドン・シャーリーは、その才能と知性で、少なくとも北部では「名誉白人」的な扱いをインテリ層には受けているのだけれども、それは彼自身にとっては、白人でも黒人でもない、宙ぶらりんな状態に置かれていることでもあるのだ。白人からは「でもやっぱり黒人」と言われ、黒人からは、「あいつは自分たちとは違う世界の人間だ」と思われる。「孤高のアーティスト」は、「孤独であることを隠すための体面」だったのだろうか。同じ人種のみんなと一緒に差別されるのと、「お前だけは別」と言われるのと、どちらが幸せなのか、居心地が良いのか。人生で、中途半端に成り上がってしまうと、そういう孤独な場所に置き去りにされることがある。
あと、差別をする側も、「長年の伝統」とか、「自分としては本意ではないのだけれど、ここはトラブルにならないために我慢してほしい」などというような「現状を自分が変えることへの不安や責任逃れ」で差別を続けていた人が少なからずいた、というか、そういう消極的な理由の人が多かった、という感じがした。
自分が糾弾されたくないから、人種差別に加担する、というような。いじめと同じ構造だよなあ。
現実に大部分の黒人に南部で行われていた差別に比べたら、「綺麗すぎる人種差別映画」なのかもしれないが、この「綺麗な差別」みたいなものは、人種問題に限らず、現代にも受け継がれている、というメッセージでもあるような気がする。
ところで、このトニー・リップ役って、ヴィーゴ・モーテンセンだったのか!『ロード・オブ・ザ・リング』のアラゴルンと同じ人だとは思えない……
- アーティスト: サントラ,ジーン・オースティン,ナサニエル・シルクレット,ジェラルド・ヒューイ・ラムゼイ,ジョニー・メイ・マシューズ
- 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
- 発売日: 2019/02/27
- メディア: CD
- この商品を含むブログを見る
ロード・オブ・ザ・リング&ホビット 劇場公開版 ブルーレイ コンプリート・セット(初回仕様/6枚組) [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
- 発売日: 2016/12/07
- メディア: Blu-ray
- この商品を含むブログ (2件) を見る
ムーンライト スタンダード・エディション [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: TCエンタテインメント
- 発売日: 2017/09/15
- メディア: Blu-ray
- この商品を含むブログ (9件) を見る