じっぽ当直日誌・スーパーマイルド@はてな

『さるさる日記』から続く、中年内科医の日常日記。これまでの分はこちら。http://touchoku.jugem.jp

「風邪薬と大人用の紙おむつが足りません」

午前中外来、午後からは病棟業務など。
仕事を終えて、明日は当直だし、病院近くのアパートにもあまり居たくなかったので、近くのシネコンに、アカデミー作品賞の『スポットライト』を観に出かけたのだけれど、「震災後の設備チェックを行うので、本日は臨時休館」とのことだった。
まあ、こればっかりは仕方がないのだが、これからしばらくは映画を観に行く時間がとれそうにないのだよなあ。
通常の生活に戻っていいのか、まだみんな半信半疑。

昨日は「緊急地震速報」が一度鳴ったものの空振りだったので、もう大丈夫だろうと思っていたのだが、20時半くらいにまたあのアラームが鳴って、運転中だったのでビクッとしてしまった。
エンジンがかかった車の中にいると、さほど揺れたという感じはないのだが、それでも横にゆらゆらしているような気がした。この地域は、震度3とのこと。
明日からは熊本空港の便も一部運航再開されるそうだが、本当にこの(たぶん)余震、いつまで続くのだろうか。
それにしても、これが鳴ることを考えれば、映画どころじゃなかったな。
結果的には、観られなくて正解、だとも言える。

車のなかで聞いていたニュースで、避難所に送られてくる物資のアンバランスが話題になっていた。
その若い男性は「風邪薬と大人用の紙おむつが足りません」と訴えていたのだが、現地のアナウンサーによると「子供用の紙オムツは、全サイズ、ふんだんに揃っている」そうだ。
僕もたぶん、『オムツが足りない』と聞いたら、子ども用のものを送っていただろうな。
小さな子どものオムツが無くて、親も子供も困っている姿というのは容易に想像できるのだが、高齢者のオムツがなくて、家族が介護に難渋している様子というのは、なかなか思い浮かばないものなのだ。
自分が送ったオムツで赤ちゃんがニコニコしている姿のほうが、想像していて心地良いし。
こんな場合でも、人は、助けたいものというか、助けがいがありそうなもの、それによって自分が満足できそうなものを助けようとしてしまうのだよなあ。
なかなか身体を洗えないとか、オムツ交換の手間などを考えれば、高齢者のほうが、より深刻な状況の可能性は高いし、介護者も疲れているのではなかろうか。
「支援のために必要なものは何か」について、考えさせられる話だった。

明日は当直なので、ひたすら憂鬱。
テレビで観た被災地の病院では、多くのスタッフが自分の家を顧みず、病院に寝泊まりして治療を続けている、というを観ると、ときどきの当直くらい、がんばらなくては、とは思う。
でも、そういう決意って、救急車が立て続けに3台来ると、あっさり崩れてしまうものではある。