じっぽ当直日誌・スーパーマイルド@はてな

『さるさる日記』から続く、中年内科医の日常日記。これまでの分はこちら。http://touchoku.jugem.jp

『カルテット』は、最終話まで「中途半端」を描き続けたドラマだった。

 WBC準決勝、プエルトリコ対オランダの試合経過を眺めていた。
 プエルトリコが強いのだろうな、と予想していたのだが、オランダ代表のバレンティンの大活躍もあり、試合は3対3のまま延長に入る大熱戦。
 最後は、プエルトリコが選手層の厚さを活かしてなんとか勝ち上がったのだが、WBCは好試合が多いなあ。
 WBC、開催国のアメリカではあまり盛り上がっていない、という話をよく聞くのだけれど、少なくとも今日の試合終了時のスタジアムはすごい大歓声だった。選手たちも懸命にプレーしているし。
 テレビの解説で「バレンティンがこんなに真面目に走っているのをはじめて見た」と言っていて、ちょっと笑ってしまった。
 明日は日本代表対アメリカ代表か……スタンドはアメリカの応援をする人たちで埋まるだろうから、やりにくい試合になるだろう。
 ただ、ホームチームにも、「勝たなければならないプレッシャー」もあるので、アメリカ代表にとっても、簡単な試合ではあるまい。


『カルテット』最終話。
「椅子取りゲームに負けたのに、椅子に座っているフリをしている人たち」
 ああ、それって僕のことじゃないか。
 なんか「とりあえず夢を追って頑張ってきてよかったよね!」みたいな、ありきたりだけれど、まあ無難な着地をするのかと思いきや、なんと炎上集客コンサート開催とは!
 でも、この開き直り、僕は憎めなかったというか、なんか好きだ。
『割烹ダイニング のくた庵』に、ちょっと笑った。
 吉岡里帆さん、まだこんな出番があったのか!


 正直、すべてにおいて中途半端で、何がやりたいのかよくわからない、脚本家が小洒落たセリフを聞かせたいだけのドラマなんじゃないか、って思っていた。
 真紀さんがやってきたことの「事実」も明かされない。
 だけど、ラストシーンで、「道に迷った!」って、砂浜を駆けずり回っている4人を観ていて、なんか泣けてきた。そして、ようやく「わかった」ような気がした。
 これは、ふつうの大人として生きるっていうことは、すべてにおいて中途半端で、みっともなくて、宙ぶらりんのまま諦めかけたり、気を取り直したりしながら迷走することなのだ、ということを描いたドラマだったのだ。
 人生は、22時40分になってもドラマチックな出来事なんて起こらないし、エンディングテーマも次回予告もない。
 この先に何かあるんじゃないかと逡巡しているうちに、いつの間にか残り少なくなり、スイッチを切られてしまう。


 起死回生の炎上覚悟コンサートでさえ、罵声が飛び交うわけでもなく、大歓声に包まれることもない。
 ああ、人生というのは、ひたすら中途半端だ。


 観客たちだって、ほとんどの人が「椅子取りゲームに負けた人」なのだから。
 楽しい時間も苦しい時間も、永遠に続くわけじゃない。
 だからこそ、今が楽しければ、それで良いのかもしれない。


 観終えて、僕ももう少し足掻いてみようかな、と思った。
 不思議なものだ、頑張っている人たちのドラマをみても、あんまり「やる気」にはならないのに。


 25時に就寝。