じっぽ当直日誌・スーパーマイルド@はてな

『さるさる日記』から続く、中年内科医の日常日記。これまでの分はこちら。http://touchoku.jugem.jp

『ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展』と「巨大建造物萌え」

 ホテルをチェックアウトして、『ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲルバベルの塔」展』を観に、国立国際美術館へ。10分くらい歩いただけで、もうぐったりしてしまうような暑さ。
 展覧会会場は、夏休み中ということもあって、午前中でも(午前中だから?)まずまずの混雑っぷりだった。じっくり立ち止まって一枚一枚観ることができる、というほどではないけれど、人混みに圧倒される、というほどでもない。
 時代的にも宗教画が多くて、あまり興味が持てないのではないか、と思っていたのだけれど、ボスという画家が、「宗教画」というカテゴリーのなかで、魑魅魍魎を活き活きと描いていて、それが当時すごく人気があったというのを知って、なかなか面白いな、と思う。
 中世の水木しげるさんのような画風。
 「宗教画」とはいっても、みんながそこに「宗教的なありがたみ」ばかりを求めていたわけでもないのだ。
 お目当ての『バベルの塔』は、別格、という感じで展示されていて、絵の近くで観賞するためには15分くらいの行列。この絵、美術の教科書(たぶん)でも見たことがあるし、すごく印象に残る作品なのだけれど、一生懸命眺めてみると、「神の意思に逆らって人間がつくった塔」という宗教的な側面よりも、ブリューゲルという人の「大建造物へのひたむきな愛情」みたいなものが伝わってくる。作業している人や塔の建造に使われている道具、さまざまな様式の窓に、背景に停泊している船まで、とにかくディテールにこだわり抜いている作品なのだ。
 「神の怒りをかった建物」というより、「カッコいい巨大建造物を想像して、思いっきり描いてみました!」っていう感じなんだよなあ。「工場萌え」に近いというか。
 もちろん、これは僕の妄想の可能性も高いのだけれど、実際に作品を目の前にすると、「ホラー映画という枠組みを使って、自分のオリジナリティを作品化した映画監督」と同じような気がする。
 「バベルの塔」を描いた絵画の歴史をみても、このあまりにも精緻すぎるブリューゲルの作品のイメージに、その後の画家たちの「バベルの塔」も影響を受けているのがわかる。
 こうして、あらためて作品を目の当たりにすると、本当は「宗教的な動機」で描かれたわけではないのに、「宗教画」としてカテゴライズされているものは、少なからずあるのだろうな、と感じた。
 こういうのって、作品と一対一になってみないと、なかなか実感できないものだよね。
 やっぱり、「目玉になる作品がある展覧会」というのは強いような気がする。
 

 新大阪駅でお土産を買って、新幹線に乗って博多まで。
 暑い中、だいぶ歩いたこともあり、調子がいまひとつなので、風邪薬を飲んだら、また眠くなってしまってそのまま寝てしまった。
 明日から、また仕事か……金曜日スタートというのは、正直ありがたい。


ブリューゲルへの招待

ブリューゲルへの招待

バベルの塔

バベルの塔