じっぽ当直日誌・スーパーマイルド@はてな

『さるさる日記』から続く、中年内科医の日常日記。これまでの分はこちら。http://touchoku.jugem.jp

「勝てばいい、バレなければいい、法に触れなければいい、自分の責任にならなければいい」

 ちょっと風邪気味なので、薬を飲みつつ仕事。
 やたらと眠いのは、季節柄なのか、体調の問題なのか。

 日大の危険タックル問題で、内田前監督とコーチが会見していた。

 内田前監督は「宮川君をあのような気持ちにさせてしまった、私といたしましても申し訳なく、反省している次第です」と述べた一方で、質疑応答で「言われている『タックルをしろ』というようなことを、信じてもらえないと思いますが、私からの指示ではございません」と何度も否定していた。
 井上コーチは「QBを潰してこいと言った」と指示したことは認めたけれど、それは「最初からおもいっきりタックルしてこい」という意味で怪我をさせる意図はなかったと繰り返していた。

 ああ、こういう人たちが、偉くなっていく世の中なのだよな。
 結局、肝心のところは濁して、相手に忖度をさせて、いざとなったら「そんなつもりで言ったのではなかった」で済ませてしまう。
 でも、あの選手が会見で語った状況で、こんな指示を出されたら、ああいう行為につながってもおかしくないことは僕にだってわかる。こういう人が、「カリスマ」として、チームを率いてきたのか……


 「勝てばいい、バレなければいい、法に触れなければいい、自分の責任にならなければいい」


 もう、スポーツの大会なんか、全部やめてしまえばいいのに。
 受験もやめだ。

 ……あらためて考えてみると、人というのは「競争に勝つ」ために努力をする生き物で、もし競争がなかったら、今のような進化のしかたはなかっただろう。
 しかし、競争を是とする社会は、ルール違反さえしなければ、あるいは、ルールに違反してもバレなければ、勝つことが最優先になりやすい社会でもある。
 僕が研修医だったころ、研修医を指導していた先生のなかには、自分が教えたことなのに、教授の機嫌が悪くて「誰がこんなことをやれと言ったんだ!」と責められると、「まったく何を言ってるんだお前。すみません、私のほうから、もう一度よく指導しておきますから」と責任逃れをする人もいた。その人が、偉くなったかどうかは知らないけれど。
 ただ、そこで、「僕が教えました。彼のせいではありません」と研修医を守ってくれた人たちは、いつのまにか、大学からいなくなってしまうことが多かった。
 自分が本当にやりたいことをやるためには、節を曲げてでも大学で偉くなる、という考えの人もいた。
 力を伴わない正義で人を救うのは難しい。

 気鬱になる話題ばかりだな、最近。


オシムの言葉 (集英社文庫)

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