なんとか諸方面に都合をつけて、博多座へ。
三谷幸喜さん脚本の文楽「其礼成心中(それなりしんじゅう)」を観に行った。
いきなり「三谷人形」が出てきて前説をはじめたことにニヤニヤしてしまったのだが、三谷さんの忙しさを考えると、こうして自分を前面に出してでも、文楽に興味を持ってもらおう、という気概が伝わってくる。
僕は文楽を見るのは初めてで、この『其礼成心中』がどのくらい異端なのかはわからないのだけれど、少なくとも、これまでの文楽の「歴史と文脈」みたいなものを踏まえておかないと、うまく羽目を外せないだろうし。
最初は、何を言っているのかわからないセリフや唄が続いて、「だいじょうぶかな……」と心配になったのだけれど、伝統を紹介しながらも、メインストーリーは現代語で進んでいくので、小学校高学年くらいなら理解できそうな感じだ。
これを観ていて痛感したのは、「これが文楽の伝統なんだ」という考えにとらわれずに、脚本の面白さというか、「この先、どうなるの?」という興味を持てるようなストーリーだからこそ、楽しく観られる、ということだった。
近松門左衛門の『曾根崎心中』が大評判となり、便乗したカップル(ちなみに、劇中でも「カップル」という言葉は普通に何度も出てきます)の「心中スポット」になってしまった曾根崎の饅頭屋夫婦。
心中スポットでは饅頭は売れず、商売あがったりになった主人は心中しに来たカップルを説得して、なんとか曾根崎の平穏を守ろうとするのだが……
「事実をもとにした脚本を書く大近松へクレームをつける人」という話も出てきて、三谷さんの姿と重ね合わせてしまうところもある。
それにしても、文楽の人形の動きは本当にすごい。
最初のほうは、「これ、人間が演じたら、こんなに大勢の人がいなくてもやれるのに」とか思っていたのだが、「人形がここまで人間のように動くものなのか!」という驚きと面白さこそが、文楽の魅力なのだな。
いやほんと、人間の細かい動作が、人間が演じる以上に表現されていて驚かされた。
主人公夫婦のお辞儀の角度まで、毎回ちゃんと妻のほうが少し深くお辞儀しているのだ。
突然、ものすごく激しい動きを見せてくれて、驚かされることもあった。
面白いなあ、文楽。人形は、自分で勝手に考えて演技をしてはくれないからこそ、すべてが動かす側の意図を反映しているわけだ。
それは、つくる側にとっては、やりがいもあり、きついことでもあるのだろうな。
観る前は、自分にわかるかどうか心配だったのだけれど、観てよかった。面白かったし、またひとつ、世界の秘密を明らかにしたような気がする。
札幌記念、テレビではマカヒキが差し切ったように見えたのだけれど、サングレーザーがハナ差で勝利。2着マカヒキ、3着モズカッチャン。いかにも荒れそうなメンバーのときには、かえって人気通りに決まることがある。
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