お昼近くに診察をしていると、「うわああっ!」という大きな歓声が聞こえてきた。
何だこれは、何が起こったんだ?と一区切りついたところで待合室を除いてみると、高校野球の金足農業対日大三高の試合が佳境に入っていた。
甲子園の歓声とロビーにいた患者さんとスタッフの声援が入り混じって、診察室にまで届いていたのだ。
普段より少しボリュームが上げられていたのかもしれないが、それにしても、こんな大歓声は珍しい。
試合は、金足農が先制し、日大三が後半追いすがるという展開だったのだが、最終回も同点・サヨナラのランナーまで出しながら、ここまで一人で投げ抜いてきたエース・吉田が締めて、金足農の勝利に終わった。
ロビーはまたも大歓声。
ある病院のベテランスタッフが、あまりにも大喜びしていたので、「秋田に何か縁があるんですか?」と尋ねてみたのだが、「そういうわけじゃないけど、地方の名門校じゃないチームが力を合わせて勝ち進んでいくのを見ると、すごく応援したくなるんです!」と言っていた。
そういう、判官びいき的な気持ちというのは理解できるのだれど、好きで、あるいは自分のために野球をやって、少しでも甲子園で勝ち上がりたいというだけの高校生たちに、世の中というのは、いろんなものを投影しているものだな、とも思う。
ずっとひとりで投げ抜いている吉田投手の肩や肘への負担は相当なものだろうけど、「秋田、そして東北の悲願」を背負って、明日も投げることになるのだろう。
日大三高の選手たちも、野球名門校というだけで「権力の象徴」として敵役にされるのは災難だよなあ。
日大三高だって、力を合わせてここまで頑張ってきたことには変わりないはずなのに。
準決勝の第2試合では、大阪桐蔭が逆転勝ちし、明日は、第100回記念大会のフィナーレにふさわしい、当代随一の野球名門校対、地方の農業高校(金足農は「無名」とは言えないだろうけど)の決勝戦となった。
大阪対その他全国だね、と誰かが言っていたけれど、国境さえ曖昧になりつつあるこの時代に、自分が所属している「県」への意識を強く持っている人がこんなにいるということに、僕はけっこう驚いている。
みんなの考え方なんて、どんなに自己啓発本がKindleで売れても、そんなに変わってはいないのだよな。
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