じっぽ当直日誌・スーパーマイルド@はてな

『さるさる日記』から続く、中年内科医の日常日記。これまでの分はこちら。http://touchoku.jugem.jp

バナナマンの日村さんの「16年前の話」に対するネットの風向きに困惑した。

 夏休み明けの出勤。
 しかも早番だったので、ああ、このまますべてから逃げ出してしまいたい……と思いつつ病院に出てきた。
 僕はこういうときいつも、自分がいない間に大問題が勃発して、出勤したとたんに針のむしろ状態になるのではないか、とか、不在中に不祥事が発覚しているのではないか、という恐怖に駆られてしまう。
 そんなに悪いことはしていないはずだが(もちろん、良いこともほとんどしていない)、医者の仕事なんて、解釈のしかたによっては、いくらでもネガティブに受け取れるし。

 実際は、細々としてトラブルはあったものの、予想よりもずっと病棟は安定していたので一安心。とりあえずスムースに仕事にも入れたのでよかった。

 バナナマンの日村さんと16年前に付き合っていたという16歳の女性が『FRIDAY』に告発したそうなのだが、ネットでの反応をみていると、「16年も昔の話なのに、なぜ今さら」とか、「金目当てだろ」とかいう日村さんへの同情の声が多かった。
「女性のほうも当時は年齢を偽っていた」らしいし。
 とはいえ、こういうネットでの反応をみていると、僕はなんだか不思議ではあるのだ。
 日村さんのことは「16年も昔の話で、日村さんも当時は売れていなかったから」セーフで、狩野英孝さんの淫行疑惑については、最近の話だからアウト、で良いのだろうか。
 「もう昔の話だから」って言うけれど、16年間も表沙汰にならないままにしておいたほうが、罪が軽くなるというのって、変な気がする。
 まあでも、こういうのは本当によくある話で、時間が経って発覚した浮気は、「もう昔のことだからセーフ」、とか、還暦を超えた歌舞伎役者の不倫は「いつまでもお元気ですね!」と温かい目でみられる、とか、何が判断基準になっているのか、よくわからない。
 長い間隠しておいたり、長年連れ添ったパートナーを裏切ったほうが、量刑は軽くなりがちなのは何故なのか。
 記事を読むと、日村さんも相手の女性に対して、相当身勝手なことをしていたみたいだし。
 ただ、恋愛って、とくに若いときって、自分にも余裕がなくて、身勝手になりがちではあるのだ。当時の日村さんは、「若かったから」で済む年齢ではなさそうだけれど、強迫・強要した、という証拠でもなければ、断罪するのは難しいだろう。「言う通りにしないと、嫌われると思って」というのは、痛々しい話ではあるけれど、結局のところ、それは「承諾した」と相手や第三者には解釈されてしまう。
 この女性も、ここまで自分に批判の矛先が向くとは思っていなかったのではなかろうか。『FRIDAY』の編集部も。
 僕は「どっちもどっち」な話だし、どちらかといえば、年長で大人だった日村さんに非があるとは思うけど、本当に成人だと信じていたのなら、「恋愛って、(よくわからないけど)そんなものだよね」と肩をすくめるだけだ。狩野さんのときも、そうだった。
 だから、僕は恋愛そのものも、他人の恋愛についてあれこれ語るのも苦手なのだ。
 われ、怪力乱心恋愛を語らず(語ってるけど)。


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