じっぽ当直日誌・スーパーマイルド@はてな

『さるさる日記』から続く、中年内科医の日常日記。これまでの分はこちら。http://touchoku.jugem.jp

エルドレッドは、マツダスタジアムの引退試合で大歓声を浴びてカープのユニフォームを脱ぐ選手だったはずなのに。

 カープから、ブラッド・エルドレッド選手、ジャクソン選手、カンポス選手の退団が発表された。
 3年契約の3年目のジョンソン選手と、フランスア選手、ヘルウェグ選手、バティスタ選手、メヒア選手は来年も残留とのこと。

 エルドレッドとジャクソン退団か……
 あの「ジャクソン・スマイル」も、もう、カープのユニフォームで見ることはできなくなるのだな。年々投球内容が不安定になってきてはいたし、今年の日本シリーズで、ヘルウェグが大事な場面で起用されていたのに対して、お試し登板のあとは出番がなかったのをみても、ベンチからの信頼も低下していたのだろう。今のカープの状況としては、短期決戦でアテにできないようなピッチャーは優先順位が低くなるのも致し方ないとは思うが寂しい。ペナントレースを戦っていくには、実績もあるし、いてほしいリリーフではあるのだが。

 そして、「カントリー」ことブラッド・エルドレッドが、こんな形で、引退試合も本人の会見すらもなく、退団となってしまったことには、寂しいというより、腹が立った。7年間カープに在籍して、なかなかCSにも出られなかったチームを支え、いまのリーグ三連覇に繋げた功労者でもあり、ママチャリで広島の街を移動する姿は、みんなに愛されていた。広島とカープを愛するナイスガイで、常に全力でプレーする姿は、新井さんと並んで、日本人・外国人を問わず、チームのお手本だった。
 今年は成績が落ちた、とはいうけれど、シーズン後半は「チームの世代交代の方針によるファーム暮らし」であり、二軍ではけっこう打ってもいたのだ。エルドレッドは、腐ることなく練習し、積極的に若手に声をかけていた。
 エルドレッドほどの実績がある選手が、二軍で懸命に練習する姿をみせられては、他の選手も手を抜くことはできなかったはずで、エルドレッドは、二軍での自分の役割として、そういう姿勢を全うできる選手だったのだ。一軍でやれる実力はまだあったと思うし、試合に出れば、それなりの成績をあげられたと僕は思っている。
 こういうことができる選手というのは、いや、人間というのは、本当に少ない。
 新井さんが引退したあとは、エルドレッドが「カープの精神的な支柱」のひとりとして必要だったのに。
 新井さんとエルドレッドとジャクソンと、あまり考えたくはないが丸までも、同じ年にいなくなってしまうなんて。

 カープは、良いチームになったと思う。
 だが、強くなったことによって、これまで「チームの成績が上がらないから」と低く抑えられていた年俸は、リーグ優勝してもそこまで大きく上がることはないことが明らかになり、功労者に手厚いと言われながらも、エルドレッドをこんな形で退団させてしまうことになった。
 勝つことによって、失われてしまった期待や希望もある。
 エルドレッドは、マツダスタジアム引退試合で大歓声を浴びてカープのユニフォームを脱ぐ選手だったはずなのに。
 新井さんにエルドレッドにジャクソンに、(考えたくないが)丸もいなくなって、経費削減できてよかったですね!と球団の偉い人に嫌味を言いたくなる。個々の事情を考えれば、八つ当たりに近い感情であることは百も承知だけれど、あまりに寂しい別れが続きすぎている。

 好漢・バリントンがいなくなって憤っていた僕が、その翌年にはジョンソンの活躍に「やっぱりプロは見る目があるのだな」と感心したように、ファンの気持ちというのも移ろいやすいのも事実なのだが。
 そう考えると、もらえるときにもらっておこう、球団もファンも良い時には優しいが、ダメになったら切り捨てるのだから、アテになるのは契約とお金だけ、と考える選手の姿勢も、けっして間違ってはいないのだよな。


fujipon.hatenadiary.com