じっぽ当直日誌・スーパーマイルド@はてな

『さるさる日記』から続く、中年内科医の日常日記。これまでの分はこちら。http://touchoku.jugem.jp

第161回芥川賞・直木賞の発表と「芥川賞作家になる」ことのメリット・デメリット


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 第161回芥川賞直木賞が発表された。
 僕にとっては、今回の両賞は、いつのまにか決まっていた、という感じだった。
 候補作が発表されてから、誰が受賞するのかなあ、なんて思いながら、直木賞の面白そうな候補作を読んでいた時期もあったのだが、最近は、正直なところ、また受賞作を読まなきゃいけないのか、ちょっとめんどくさいな、という気分になっている。いや、読まなきゃいいんだけどさ。読まないと何かペナルティが課されるわけじゃないんだし。
 自分で決めたルーチンに自分で縛られるというのは、なんだか馬鹿馬鹿しいことでもある。
 でも、そういうのが無いと、何をやっていいのかわからなくなるし、唐突に、死んだらどうしようとか、考え始めてしまうこともある。どうしようって、どうしようもないに決まっているのに。

 今回の芥川賞は、今村夏子氏さんの『むらさきのスカートの女』、直木賞大島真寿美氏さんの『渦 妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん) 魂結(たまむす)び』が受賞。
 今村さんといえば『星の子』、大島さんといえば『ピエタ』。それぞれ1作ずつしか思い浮かばないので、少し申し訳ない気分になる。
 ただ、こういう人たちこそ、芥川賞とか直木賞をきっかけに、もっと読まれるといいな、とは思う。
 古市憲寿さんの落選が大きく報じられているニュースが多かったけれど、古市さんは芥川賞を獲っても獲らなくても、そんなに人生変わらなさそうだし。
 今日、『ポトスライムの舟』で芥川賞を受賞した津村記久子さんのエッセイを読んでいたのだが、津村さんが子供の頃に両親が離婚して以来会っていなかったというお父さんの訃報が、出版社経由で知らされてきて、「これも芥川賞の影響なのか」と書かれていた。
 それは、津村さんにとっては「とくに知りたいわけではない情報」というか、「もう関わりたくないこと」だったようなのだが、知ってしまったがために、何もしないわけにはいかなかったようだ。
 芥川賞は、人生を変える。作家として食べていけるパスポートであるのと同時に、その称号を得ると周りから放っておいてもらえない人間になってしまうのだ。


渦 妹背山婦女庭訓 魂結び

渦 妹背山婦女庭訓 魂結び

むらさきのスカートの女

むらさきのスカートの女