じっぽ当直日誌・スーパーマイルド@はてな

『さるさる日記』から続く、中年内科医の日常日記。これまでの分はこちら。http://touchoku.jugem.jp

コントレイルとアリストテレスの叩き合いに、競馬の「本気」を見せてもらった。

 秋晴れの日曜日。長男の運動会がこじんまりと開催された。
 もともと運動はあまり得意ではないイメージがあったのだが、徒競走で1着になり、親のほうが大喜び。子どものほうは、一緒に走る子たちのなかで自分が何番くらいになるのか、だいたい見当がついているので、当たり前のような顔をしていた。まあ、仲間に勝って、あんまり嬉しそうにもできないよね。そういう点でも、少しずつ大人に近づいてきている。

 帰宅後、菊花賞を観戦。
 無敗の三冠馬を目指すコントレイルの名前の由来が「飛行機雲」だというのをはじめて知った。荒井由美か。でもなんかそう思うと儚い名前にも感じるな。
 コントレイルをパドックで観るたびに、長距離馬じゃないよなあ、と思うのだが、今日は落ち着きもあり、仕上がりもよさそう。そもそも、今年は相手が弱い。先週のデアリングタクトもそうだけど、「三冠馬が出る条件は、ライバルたちのレベルが低いこと」だと誰かが言っていたのを思い出す。
 だが、それゆえに、コントレイル以外は、みんなどんぐりの背比べ、という感じで、相手がなかなか絞れない。実績からいえばヴェルトライゼンデが相手筆頭になるのだが、この馬も距離が延びることがプラスなる感じはしない。もっとも、最近の馬に菊花賞向きのステイヤー血統なんてほとんど存在しないのだが。
 馬券は、悩みに悩んだ末、いつもG1に使う半分くらいの金額で、コントレイルの複勝だけを買った。単勝が1.1倍から1.2倍くらいで、僕が見ていたときには複勝1.1倍だったので、それなら万が一のことも考えて3着まで当たりの馬券にしよう、と思ったのだ。コントレイルから馬連で気になる馬に流すと、トリガミ(的中したのにマイナス収支になること)のリスクが高そうだったし。
 ところが、レースが近づいてくると、単勝は1.1倍で、複勝は1.0〜1.1倍に。1.0倍って……さんざんリスクを負って、元返しってことか……いや、1.1倍の馬券というのも、期待値的には買うべきじゃないのだが……まあでも、大損しなければ、それでいいか……1.1倍を金額を抑えて買うなんていうこと自体が、ギャンブルとしては既に負けているのだから。

 レースで、コントレイルは中団につけて折り合いもまずまずのように見えた。スタンド前での大歓声がないことも、三冠をめざす人気馬にとってはプラスになったはず。ただ、コントレイルの外に、ルメール騎乗のアリストテレスがぴったりとついて、ずっとマークしている。内の馬場がかなり荒れているのだが、コントレイルはアリストテレスのプレッシャーを受けながら、ギリギリ荒れているところを避けている、という感じ。
 最後の直線は、コントレイルの三冠ロード、と思いきや、外からルメールアリストテレスが馬体を併せてきて、2頭は壮絶な叩き合いになった。
 勢いはアリストテレスなのだが、コントレイルも抜かせない。少しずつ差を詰めるアリストテレス。粘り込もうとするコントレイル……

 最後は、クビだけしのいで、コントレイルが無敗の三冠達成!

 感動してしまった。テレビで解説していた競馬記者も、涙声になっていた。
 レース前は、コントレイル断然、と見られていたし、世の中のムードも、「新型コロナで沈んでいる世の中に、スターホースで明るい話題を!」という感じにみえていた。
 相手も弱いし、他の出走馬(の関係者や騎手たち)も忖度して、コントレイルを積極的に勝たせようとはしないまでも、あんまり逆らわないのだろうな、とも思っていたのだ。
 だが、彼らはみんな、プロであり、勝つためにベストを尽くすホースマンだった。コントレイルを徹底的にマークし、最後まで食い下がったアリストテレスルメールをみて、苦しみながらもその追撃をなんとかしのいだコントレイルと福永騎手をみて、ああ、競馬って、みんな「本気」なんだ、という、当たり前のことを、あらためて思い知らされたのだ。勝つために、「本気」でしのぎを削るからこそ、勝利には価値がある。

 いいレースだったと思う。結局、複勝も110円ついたし(苦笑)。
 ただ、録画を見直してみると、「ルメールの直線での追いかたも、コントレイルに勝っていいのかちょっと迷っていた」ように見えなくもない。それはたぶん、こちら側の思い込みなんだろうけど。

 とりあえず、久々に良い日曜日だったような気がする。