じっぽ当直日誌・スーパーマイルド@はてな

『さるさる日記』から続く、中年内科医の日常日記。これまでの分はこちら。http://touchoku.jugem.jp

ソフトバンクホークスは、プロ野球というものの「新しいシステム」を作ろうとしているチームなのだと思う。

 日本シリーズは第4戦で終了。ソフトバンクが4連勝で日本一になった。
 途中まではときどき試合経過を追っていて、最後だけテレビを観たのだけれど、この4試合で巨人が優勢になったのは、今日の1回に先制したときだけだったかもしれない。せっかくリーグ優勝しても日本シリーズがこの結果では、公開罰ゲームみたいなものだよなあ。去年は正直、アンチ巨人としては爽快ではあったが、2年続くと、セリーグってこんなに弱かったのか?とがっかりしてしまう。そもそも、全試合DH制に同意したというのは、相手の土俵に乗ってしまうことでもあり、東京ドームが使えなくて巨人のホームが京セラドームになったことも大きかったのではないか。全部ビジターで試合をしたようなものだよなあ。あの原監督のことだから、何か考えがあるはずだと思い込んでいたけれど、DH制推進派として信念に殉じたのか、それともDHは有利に働くと考えていたのか。あるいは、予想以上に力の差があったのか。
 試合後のセレモニーを観ていたのだが、今回もソフトバンクは「胴上げ」ではなくて、選手・スタッフが輪になっての万歳三唱を行っていた。
 誰がこういうアイディアを考えているのかはわからないけれど、長年の野球界の「常識」にとらわれずに「感染対策をきちんとやっていますよ」「これが『新しい生活様式』でのセレモニーですよ」というのを、ソフトバンクはチーム、あるいは企業として徹底的にアピールしつづけていた。多くの人が観ている日本シリーズの優勝決定の舞台というのは、宣伝にはもってこいの場でもある。
 今年のプロ野球で印象に残ったのは、ソフトバンクがリーグ優勝したときに、こういう「新しい優勝セレモニー」をやったのに対して、巨人は「マスク・手袋着用で、例年と同じような胴上げ」をやっていたことだった。そういう「伝統」を大事にするのが巨人というチームであり、それは魅力であるのと同時に足枷にもなっているのかもしれない。まあ、プロ野球は企業文化を発信するコンテンツなのだ、と徹底的に割り切っているソフトバンクのほうが特別ではあるのだけれど。
 ソフトバンクは、プロ野球というものの「新しいシステム」を作ろうとしているチームで、既存のシステムのなかで強いチームを作ろうとしている他球団とは一線を画している。
 一芸に秀でた、あるいは、将来性を買って育成で指名した選手を発掘し、育てて、競争のなかで強いチームをつくる、というソフトバンクの手法を巨人も真似してきていて、お金もやる気もあるチームとその他のチームの差が、新型コロナ禍という状況では、より際立ってしまったシーズンでもあった。結果が出せない選手がどんどんクビになったり育成に落とされたり、ベテランが早めに見切られることにもつながっているのだが、以前読んだソフトバンクのある育成出身選手のインタビューでは「プロに入れれば、あとは自分自身の問題だし、育成でもチャンスがもらえたことはありがたいと思っている」と言っていた。
 今年に関しては、なんとかこうして日本シリーズまで完走できたことそのものが、プロ野球界の勝利だとも言えるだろう。
 そして、感染症が蔓延する社会というのは、人々の考え方や生活様式が大きく変わるきっけけにもなる。
 ルターの宗教改革が起こったのは、ペストの流行で、バタバタと多くの人が死んでいくのをみて、人々が神への信仰に疑問を抱くようになったのが背景にあると言われている。
 マスク生活に慣れてしまうと、どのタイミングで外すかというのは難しいよね。マスク生活は、煩わしいのと同時に、他人に顔をあまり見られないことへの安心感もあるし。