じっぽ当直日誌・スーパーマイルド@はてな

『さるさる日記』から続く、中年内科医の日常日記。これまでの分はこちら。http://touchoku.jugem.jp

「東京オリンピック」開催への不安と、「池江璃花子選手に出場してほしい」との葛藤

 大阪杯は雨だった。雨で重馬場の阪神なんて、そう簡単に、人気通りには決まらないよな……と思ってはいたのだけれど、さすがにこのメンバーでは、重だろうがコントレイル、グランアレグリア、サリオスの3頭が抜けている、逃げそうなレイパパレは展開利があり無敗馬は怖いのでいちおうコントレイルと枠連で買って……と、当たってもあまり儲からない堅い馬券を買ってしまった。外れたので、「当たっても儲からない心配」は、まさに杞憂になったのだが。G1初挑戦で小柄な牝馬が力の要りそうな馬場で圧勝したのも驚きだが、コントレイルやグランアレグリアがモズベッロに差されたのには絶句した。こうして書いていても投げやりな気分が蘇ってくる。まあ、こういう、思考過程で一度も候補に上がらなかった馬券だと、どうしようもない。ああ、でもこういう、逃げ馬が圧勝して、それを早めに捕まえようとした有力馬が軒並みバテて、人気薄が差してきて2着、ってレース、たまにあるんだよなあ。ダイワスカーレットが勝った有馬記念の、2着アドマイヤモナークを思い出した。こういうレースは、さっさと忘れてしまうに限るのだが、コントレイルも運が悪いというか間が悪いというか……あんなに雨が降らなかったら、結果は違っていただろうに。今年の競馬は道悪が多くて、本当に難しくなっている。道悪だから荒れると予想したら、先週の高松宮記念は、人気どころで決まってしまったし。

 白血病で闘病していた水泳の池江璃花子選手が、競泳の日本選手権女子100メートルバタフライの決勝で優勝し、東京オリンピックメドレーリレーの代表に内定した。すごい、まさに奇跡の復活!ネットで、「池江選手が出られるというだけで、東京オリンピックを開催する意義がひとつできたな」と書かれているのを読んだ、そうだなあ、と思った。
 僕は正直、まだ新型コロナが世界的に蔓延しているなかで、外国からの観客受け入れもできないままオリンピックを開催なんて正気かよ、と思っていたし、いまも思っている。その一方で、池江選手をみて、オリンピックで泳がせてあげたいなあ、それを観たいなあ、と考えずにはいられないのだ。
 全体としての「オリンピック開催」には反対でも、そのオリンピックに参加する選手ひとりひとりのことを思うと、「これだけオリンピックのために頑張ってきた人たちから晴れ舞台を奪うのは残酷だ」という気持ちになる。
 だが、オリンピックには「やるかやらないか」という選択肢しかないのだ。

 人は「全体」を見ているときには「個」を忘れがちだし、「個」に入れ込んでしまうと、「全体」への判断が情で揺れてしまう。
 「死刑制度反対」という人でも、子どもに対する猟奇的な大量殺人犯に対する遺族の声を聞いたら、「例外」やむなし、と考えてしまうのではなかろうか。

 池江選手の復活には、感動した。
 でも、感動の人間ドラマに引きずられて、あるいは、それを信仰の対象にして、多くの人が、その人にとって危険で残酷な道を選択したり、させられたりしたことは、歴史上、イヤというほどあるのだ。東京オリンピック、どうしたら良いのだろう?
 もう、これまで十分我慢したから、開き直ってやっちゃえ!というのも、気持ちとしてはわかる。医療者としてはあまり望ましい選択ではないけれど。なんのかんの言っても、これで人類が絶滅するようなものではなさそうだ。ただしこれも、「個」でいえば、自分が感染すれば命を落とすリスクはかなりある。
 ただ、メディアで新型コロナを理由にオリンピック中止を訴えているのは、コロナ前からオリンピックに反対していた人が目立つのだよなあ。僕も新型コロナで飲み会や会議がなくなってラッキー、とか思うことは多々あるので偉そうなことは言えないけれど。
 結局、ほとんどの人は状況を見て物事の可否を判断しているのではなくて、自分の好みやあらかじめ決めている結論の理由づけに状況を利用しているだけなのかもしれない。


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