じっぽ当直日誌・スーパーマイルド@はてな

『さるさる日記』から続く、中年内科医の日常日記。これまでの分はこちら。http://touchoku.jugem.jp

さらば「平成の怪物」。なんだか急に、「平成」が遠ざかっていく気がした夜だった。


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 埼玉西武ライオンズ松坂大輔投手が引退登板。
 日本に帰ってきてソフトバンクに入院してからは、中日で1年間そこそこ活躍した以外は、ほとんど1軍の試合で投げられなかったのに現役にこだわり続けてきた松坂。
 これまでさんざん「プロリハビラー」などとネットでは揶揄されてきたのに、引退試合となると「ありがとう松坂!」みたいな雰囲気になるのは不思議な気分ではある。惜しんでいるのは、叩いていたのと同じ人たちなのか、それともまったく別人なのか。
 まあでも、僕の個人的な感情としては、「引退して寂しい」というよりは、「よくここまで現役を続けてこられたなあ」だ。
 リーグ3連覇に貢献したカープの今村でさえ30歳で戦力外になったことを思うと、なんのかんの言っても、「松坂大輔」のネームバリューは大きかったのだろうな。数千万円くらいの年俸なら、グッズの売り上げでお釣りがくる、なんて報じられてもいたし。プロは実力の世界、とは言うけれど、興行である以上、人気というのは大きな武器ではある。

 もっと早く引退して、新しいことをはじめたほうが良いのに、と思っていた。

 引退登板は、リアルタイムではなくて、家に帰ってきてからスポーツニュースで観た。

 ……正直、観ているのがつらかった。

  投球フォームは、たしかに松坂大輔っぽい。
  でも、この110キロ台のボールを必死にストライクゾーンに投げ込もうとしているピッチャーは、本当にあの松坂なのか。
  バッターの日本ハムの近藤選手に「後生だから、さっさと打ってラクにしてあげてくれ」と頼みたくなったのだが、近藤選手も、「はたして、全盛期の松坂どころか、二軍でも通用しそうにない、でも本人は懸命に投げているボールをバットに当てて、それで終わらせて良いものなのか」と迷って、ただ、見送り続けているように見えた。
 松坂の最後の公式戦のマウンドは、とても痛々しいものだった。
 だが、それと同時に、「これでは、まあ、いろいろと仕方ないな」と、納得せずにはいられない姿でもあった。

 松坂は、あの状態で、マウンドに立つべきだったのか?
 イメージを考えれば、ファンはあんな姿を見たくないし、本人も見せたくはなかったはずだ。

 高校時代のPL学園との試合で、松坂がブルペンに入っただけで雰囲気がガラッと変わり、日本では西武ライオンズを、WBCで日本代表を優勝に導き、レッドソックスではワールドシリーズ制覇のメンバーの一人となった投手。
 引退試合で観たいのは、こんな松坂ではなかった。
 でも、だからこそ、あの状態でマウンドに立った松坂には、圧倒的な説得力があったのだ。

  さらば「平成の怪物」。なんだか急に、「平成」が遠ざかっていく気がした夜だった。


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