じっぽ当直日誌・スーパーマイルド@はてな

『さるさる日記』から続く、中年内科医の日常日記。これまでの分はこちら。http://touchoku.jugem.jp

昭和の郵便局にタイムスリップしてきた話


 風がものすごく強い日。
 お昼に久しぶりに郵便局へ行った。
 正確には、不在票が入っていた郵便物を直接受け取りにはときどき行くのだが、昼間に窓口でやりとりをするのは少なくとも今年初めてだ。
 専門医の更新の締め切りが近づいてきたため、必要な書類を集め、なんとか今月末の締め切りに間に合った。やれやれ。
 学会関係は、まだデジタル化が進んでいなくて、長年学会費も郵便局払いになっていた。平日の昼間に郵便局とか銀行に行けるわけないだろ!と若い頃、みんなで憤っていたのだが、最近は平日休みもあるし、昼休みに行くことだってできる。ただ、最近はコロナ禍の影響もあって、大きな学会もオンライン開催、参加証明書もダウンロードして印刷、参加費や学会費もカード払いができるようになった。コロナに感謝するようなことではないが、間違いなく、変わるきっかけにはなったと思う。

 大きな郵便局に向かう途中で見つけた簡易郵便局で発送を済ませることにしたのだが、窓口では職員さんと高齢のお客さんが1対1×2組で、延々とお金の話をしていた。「押し問答」とはこういうものか、という内容で、郵便貯金の預け入れ金額の限度について、客が延々と「なぜこれだけしか預けられないのか」と文句を言い、職員が「申し訳ありませんが、そういう決まりになっていますので……」と答えていた。そういうのは現場の職員にはどうしようもない話で、どうしてもというのなら、岸田総理に陳情するしかなさそう。もう一組も、お客さんがずっと世間話をしていて、昭和の郵便局にタイムスリップしてきたような感じだった。まあでもこれ、時間に余裕がない時だったら僕はキレていたかもしれない。
 最近は銀行もスマホを使ってネット銀行での取引で大概の用事は済ませられて、窓口に行くことはほとんどなくなった。
 でも、こういう光景を目の当たりにすると、世の中には、まだまだ、郵便局や銀行の「窓口」を必要としている人が大勢いるのだな、と思う。のんびりとした職場すぎ、もっとコストを削減しろ!という意見もあるだろうし、あのお客さんたちに、ネット取引のやりかたを覚えろ、と言うのも酷だな、という気もする。
 ああやって、まとまらない高齢者の話をなだめつつ聞くという仕事も、かなり大変そうだ。世の中に残っている人間の仕事は、どんどんAIやコンピュータに置き換えられるか、感情労働になっていく。ああ、医療もそういう仕事なんだよな。

 僕自身、長年「自分がコンピュータが好きで、新しいテクノロジーに詳しい」つもりだったのだが、自分の子どもたちをみていると、スタート時点が違い過ぎることに愕然とする。僕が富士山の麓から歩いて登って、もうヘトヘトになっているとすれば、向こうはヘリコプターで7合目くらいまでやってきて、これから登ってやるぞ、と余力十分。
 しかし、郵便局も大変だよな、この時代に年賀はがきとか、保険商品とかを売らなきゃいけないし、今の金利では、投資ブームのなか、ゆうちょにお金を預ける人がこれから増えるとも思えない。日本の人口もどんどん減っていくのだし。
 どんどん人が減っていく日本、というのをこの目でみてみたいなあ、とか、思うこともあるのだ。ディザスター映画の見過ぎか。『霊長類南へ』か。

 今週末は業務が多いので、早めに寝るつもりだったのだが、寝坊できない、というプレッシャーで寝つけず眠りも浅かった。