じっぽ当直日誌・スーパーマイルド@はてな

『さるさる日記』から続く、中年内科医の日常日記。これまでの分はこちら。http://touchoku.jugem.jp

ソフトバンクホークスの松田宣浩選手の退団に、「引き際の処世術」の難しさを思う。


 ソフトバンクホークス松田宣浩選手が戦力外通告を受けて他球団への移籍を希望、とのこと。
 僕はソフトバンクのファンではないけれど(むしろ日本シリーズでやられたので天敵に近いが、北部九州でアンチソフトバンクを前面に出して生きていくのは難しい)、ソフトバンクの情報はやたらと入ってくる地域で、チームの象徴ともいえる松田選手がこうしてチームを去ることになったのは意外だった。
 年齢的にも、もう39歳で、今年だけダメ、ということであれば功労者を冷遇した、とも思うが、松田選手の成績は年々落ちてきており、近年は「松田だから」と起用されてきたような印象もある。というか、ソフトバンクって、サードがあまり出てこなかったんだよなあ、松田の存在が大きすぎたからなのかもしれないが。藤本監督にとっては、世代交代が大きなミッションで、自分の仕事として、大功労者に引導を渡す役割を果たしたのだろう。
 
 僕はこの話を聞いて、このままソフトバンクで引退した方が、セカンドキャリアにとっては有利なのではないか、と思わずにはいられなかった。
 今年で引退してコーチなり解説者として「外から野球を見る」なりしていけば、いずれはソフトバンクの監督になるはずの存在だ。
 指導者だって、教えるプロになるためには、若いうちにはじめて悪いことはあるまい。
 ロッテに移籍した元阪神の鳥谷選手とか、ヤクルトに行った内川選手とか、晩年の移籍はあまり有益だったとは思えない。僕が知る限り、戦力外扱いからの移籍で復活したのは、元広島の新井さんくらいだ。

 まあでも、本人にしてみれば、「まだやれる」という気持ちなんだろうな。実力はあるとしても、起用する側からすれば、もう長くは活躍できないベテランよりも若手にシフトしていくのは、やむをえないところではあるのだが。あと、いつかは必ずやってくることでも、いざ、引退とか「辞める」というのに直面すると、「あともう少しだけ」と引き伸ばしてしまうのもまた人間なのだろう。他人事であれば、「セカンドキャリアのためにさっさと切り替えた方がいい」と割り切れることでも。医者だって、定年がないだけに、ずっと現場で仕事を続けている人が多いし。本当にセカンドキャリアも、「少しでも早いうちにはじめた方が良い」ことが多いんだけど。僕自身も「そろそろ臨床は引退したら」と言われても「あと1年くらいはできるんじゃないかな……」とか躊躇ってしまいそう。「そういうこと」も考えなければならない年齢に僕もなってきた。と、ここには書くけれど、やっぱり、実感はわいてこない。自分のことって、自分がいちばんよくわかっていないのではないか、と、この年齢になって、ようやく気づいた。


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