じっぽ当直日誌・スーパーマイルド@はてな

『さるさる日記』から続く、中年内科医の日常日記。これまでの分はこちら。http://touchoku.jugem.jp

「良い答え」が得られないのは、質問する側の責任がけっこう大きい。


 外来や検査など。少し寒さが緩んできたような気がするのだが、まだ2月上旬だし、まだこのまま春にはならないだろう。
 今日の仕事は、なんだか濃いキャラクターの人を相手にすることが多くて、けっこうくたびれた。そこに、来週だと思い込んでいた会議が今日であることを知らされてつらい。嫌なこと、めんどくさいことは先にやってしまったほうがいい、好きな食べ物は後に残しておくタイプではあるのだが、年齢とともに、後にとっておいたら、先に死んでしまうかもしれないしなあ、などと思うようになってきた。
 50年以上生きてきて、勉強以外は、やりたいと思ったときにやったほうがいいし、食べたいものから食べたほうがいい。ちなみに勉強を除外したのは、「やりたいときにやらないほうがいい」からではなくて、どうせやりたくなんかならないのだから、やるべきときには嫌々でもやれ、という意味だ。

 夜の会議、今日はすぐに終わるはずだったのだが、予想外に議題が多くけっこう長くなってしまった。
 もうすぐこの公的な審査の担当もお役御免なのだが、月に1回でも仕事の後の仕事はけっこうつらかった。当直もなく、研究会も飲み会もない、転職後、コロナ中の世の中で、僕も贅沢になってしまったものだ。この会議が終わる時間だって、転職前なら「今日は早く帰れたなあ!」と嬉しくなっていたはずなのに。

 しかしこの仕事、審査をする側になってみると、どういうふうに申請をすると通りやすいのか、「重症であること、困っていること」がうまく伝わるのかが理解できて、参考にはなった。

 以前、病理の研究室でお世話になり、上の先生にチェックしてもらいながら診断をしていた。その立場になってみると、「臨床医は、この組織から何を知りたいのか」という目的や臨床診断の根拠がきちんと書かれている依頼書と、ただ「病理組織診断おねがいします」だけしか書かれていない依頼書とでは、こちらの仕事のやりやすさ、診断の精度がかなり違うのだ。僕は放射線科医の仕事をしたことはないけれど(正確には3ヵ月くらいローテーションでの研修はした)、放射線科でもそうだと思う。

 病理の仕事を知るまでは、「病理からのコメント、曖昧でよくわからないなあ」と思うことが多かったのだが、それは、僕が「何を知りたいのか」をちゃんと依頼書で伝えられていなかったからなのだ。
 学生時代、弓道部で、先輩に「お前は矢が的に当たらないと嘆いているけど、矢はちゃんと狙ったところに飛んでいるよ」と言われたことがある。池上彰さんの「いい質問ですねえ」じゃないけれど、「良い答え」が得られないのは、質問する側の責任がけっこう大きい。

 その会議は公的な仕事で、報酬は出るものの、同じだけ払うから行かないで済むようにしてくれないかなあ、と思うくらいの金額ではあったのだが、審査をする側として、物事を反対側の立場からみてみる経験というのは、すごく役に立った。

 いいかげんにはできない仕事だから、疲れるんだけど。
 もうすぐ任期も終わりだから、こうして振り返れるのだけれど。

 あと、公務員はいつも定時に帰れて、ラクだし好待遇でうらやましいねえ、と言う人は多いけれど、僕が知るかぎり、ものすごく働いているよ、少なくとも医療関連で接する人たちは。

 家に帰って、とりあえず『Fit Boxing2』の「かるい」の今日の分だけ。まあ、今日は仕方ない。


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