じっぽ当直日誌・スーパーマイルド@はてな

『さるさる日記』から続く、中年内科医の日常日記。これまでの分はこちら。http://touchoku.jugem.jp

紹介されたセミナーの演者のひとりに、昔からの友人の名前を見つけた。

 朝から外来。
 お昼くらいに薬のメーカーの人が来て、話を聞いていたのだが、紹介されたセミナーの演者のひとりに、昔からの友人の名前を見つけた。
 そうか、けっこう大きな規模の講演会で演者のひとりになるくらい頑張っているんだな。
 年齢的にも同じくらいだし、ずっと世話にもなった「いい男」なので、嬉しくも誇らしくもあるのと同時に、現在、キャリア的には「下り坂をゆっくり降りていくだけ」で、半ばセミリタイアしてしまっているような僕としては、顔を合わせたら、どんな表情をしたら良いだろうか、とも思う。メーカーの人に、友人が演者であることを話そうかと一瞬思ったのだが、そんなことを言われてもこの人も困るだろう、ということに気が付いてよかった。彼がそういうことで昔からの友人を蔑むような人間ではないのは百も承知だし、世界を又にかけて活躍している、というような超エリートコースではなさそうなのだが、だからこそ、なおさら考え込んでしまうのだ。

「友がみな、われより偉く見ゆる日よ」

 石川啄木も、こんな気分だったのだろうか。
 だが、われわれは、石川啄木が歴史に名前を残していることも知っている。
「あの啄木でさえ、そんな気持ちになったのだなあ」とは思うけれど、僕の場合は、雌伏ではなく、単にダメ人間なだけだ。
 自分で選んだ道ではあるし、この選択のおかげで、ラクに生きられるようになったのは間違いない。
 しかしながら、僕は何かを喪ってしまったのもまた事実なのだ。

 早めに帰宅し、食事をして今日は早めに寝ることにした。
 ネットで『テイエムプリキュア』がトレンドワードになっていて、「亡くなってしまったのか……でも、トレンド1位ってすごいな……」と思っていたら、NHKの『鶴瓶の家族に乾杯』で元気な姿が紹介されたらしい。
 Twitterで人の名前がトレンドになっているのをみると、いつも「亡くなってしまったのか?」と思うのは、たぶん、僕だけではなかろう。
 これも、ネットのあまり美しくない日常ではある。


一握の砂・悲しき玩具―石川啄木歌集―

一握の砂・悲しき玩具―石川啄木歌集―