嵐の日だったが、僕たちにとっては、「それどころじゃない」一日になってしまった。

　長男を模試に連れていったあと、買い物をして、ついでにゲームセンターに寄った際に、悲劇が起こった。
　ひととおり遊んで、さあ帰ろうか、と車のドアに手をかけたのだが、開かない。何度やりなおしても。
　えっ？何これ？と焦りつつ探ってみたのだが、車の鍵がなくなっていた。
　ここまでは来ているし、駐車場から行った先はトイレとゲームセンターくらいなので、探すべき場所はそんなに広い範囲ではないはずなのだが、いくら探しても鍵は見つからず、結局、タクシーで自宅に戻り、スペアキーを持って帰ってくることになってしまった。
　それでも、スペアキーが、ちゃんと予想していたところにあっただけ、救われたのだけれど。
　最近、とにかくものを失くすことが多くて、不安になっている。先日のiPhone紛失もそうなのだが、信じられないような失くし方をしていることばかりなのだ。
　今回は僕がひとりであたふたしている一方で、長男はむしろ冷静に、「次に何をすべきか」を僕にアドバイスし続けてくれていた。というか、相手が10歳の子どもであっても、こういうときに誰かがそばにいてくれると、厭な現実から逃げたくなる僕も腹が据わるところがある。宿題するのが遅くなってしまってすまない。
　
　ずっと迷っていたスマートフォンをついに機種変更……した帰りだったんだよなあ。長年連れ添った6Sの未練……とかいうものではないとは思うし、まだ新しい機種は来ていないのだが。

　ようやく家に向かえた車のなかで、「嵐……活動休止だってよ！」と長男が興奮しながら教えてくれた。
　10歳と40代半ばの男ふたりでさえ驚く発表がなされた日だったのだが、僕たちにとっては、「それどころじゃない」一日になってしまった。