じっぽ当直日誌・スーパーマイルド@はてな

『さるさる日記』から続く、中年内科医の日常日記。これまでの分はこちら。http://touchoku.jugem.jp

「悪口」と「嫌われるかもしれないが、言って、聞いておかなければならないこと」は違う。


 2024年9月6日。仕事の体制が変わったので、これまでとは違う時間の使い方の金曜日。
 急患がいつ来るかわからない、とジリジリしながら手持ち無沙汰で過ごすよりも、やることがあって、慌ただしく動いていたら終業時間になった、というほうが、時間が経つのが速くてラクなのかも。いや、根本的に、当直とか救急とか、ずっとスタンバイ状態のまま時間を過ごすのが苦手なのだ。レストモードではなく「電源を切る」じゃないと、心が休まらない。これで、よく30年もこの仕事を続けてきたと思う。

 小泉進次郎さんが自民党総裁選に出馬を正式表明。会見で、「(小泉さんは)知的レベルが低い」と揶揄するような質問をした記者がいて、それに対する小泉さんの受け答えが話題になっていた。


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 政治家や政権と癒着し、馴れ合いのようなやり取りをしている記者の質問は面白くないが、ここまで相手を小馬鹿にする記者がいるのかと呆れてしまう。
 「あなたはまだ43歳で若くて、経験も浅いと思うのだが、首相として、各国の百戦錬磨のリーダーたちと渡り合っていく自信がありますか?」と尋ねれば良いことで、いちいち「あなたは知的レベルが低い」とか中傷する必要はないはずだ。

 でも、世の中には、こんなふうに「自分が言いたいことを言うときに、いちいち目の前の人に嫌味を言わないと気が済まない人」って、いるのだよなあ。周りは「感じ悪い人だなあ」としか思っていないのに、本人は「みんなが言えないことをビシッと言ってやった」と御満悦。「なんでも暗黙の了解にしてしまって、本質に切り込めない」のは日本の悪しき伝統ではあるが、「悪口」と「嫌われるかもしれないが、言って、聞いておかなければならないこと」は違う。嫌味や批判ばかりで、相手を不快にさせたら勝ち、っていう「私は正直者」だと思い込んでいる人には、日常生活でも時々出会う。

 僕は50年以上生きているけれど、本当に知性を感じる人が、「知的レベル」なんて曖昧で悪口にしか使えない言葉を口にするのを見たことも聞いたこともない。まあでもこれある意味、小泉さんにとっては、かなりのイメージアップになった気がする。
 どんな形でも、目立ったほうが勝ち、みたいなのが「ジャーナリズム」なのだろうか。

 自分の能力が高いがゆえに、なんでも自分でやろうとしたり、周りを信頼できなくなる人よりも、自分の力不足を知り、できないことはできる人に任せる度量がある人のほうが、東洋的なリーダーとしては好まれがちでもある。項羽と劉邦、だな。
 とはいえ、その「将に将たる器」とされた劉邦も、晩年は功臣たちを疑うようになり、多くの功労者が排除されたのだから、人間というのはずっと「いい人」ではいられないということか。

 『夜と霧』で、著者のフランクルさんも書いていた。
 「本当にいい人たちは、(ナチス強制収容所から)帰ってこなかった」と。

 正直、今の社会のシステムだと、誰がトップになってもそんなに変わらないのではないか、とも思うのだ。トランプ大統領時代のアメリカも、就任時に心配していたほど破茶滅茶ではなかったし。

 25時くらいに就寝。


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