じっぽ当直日誌・スーパーマイルド@はてな

『さるさる日記』から続く、中年内科医の日常日記。これまでの分はこちら。http://touchoku.jugem.jp

2018年のワールドカップ・ロシア大会の主役は、VARだったと感じた決勝戦だった。

 サッカー・男子ワールドカップ決勝戦、フランス代表対クロアチア代表。
 正直、クロアチアはトーナメントの対戦相手に恵まれた感じがしていたのだが、ずっと延長、逆転勝ちでしぶとく勝ち上がってきたチームでもある。
 フランスはアルゼンチン戦で少しだけ危ない時間帯があったものの、あとは圧勝続き。
 おそらく、フランスのほうが実力はありそうだけれど、トントン拍子で来たほうが、最後に足元をすくわれることも多いのだよなあ。
 大国フランスと人口400万人のクロアチアということで、判官贔屓的にクロアチアにやや肩入れしながら観戦していた。まあでも、とにかく良い試合、面白い試合が見たいよなあ、決勝だし、日本代表が出ているわけでもないし。
 前半18分にゴール前からのフリーキックマンジュキッチの頭をかすめてコースが変わり、ゴールしたときには、これはもうフランスのペースだな、と思ったのだが、ペリシッチの凄いゴールでクロアチアが同点に追いついた。
 これは面白くなってきた、クロアチア攻勢の時間が続く。
 しかし、前半残り10分をきったところで、ゴール前で、そのペリシッチのハンドがあったのではないか、ということで、VARによる判定になった。
 その結果、ハンドが確認され、フランスはグリーズマンが冷静にキーパーの動きをみて決めてまた勝ち越し。

 結局、試合を決めたのは、この判定だったと思う。
 僕はあの場面、確かにハンドっぽいけど、せっかくの決勝戦、同点の緊迫した好ゲームが、あんなつまらないハンドによるPKで動いてほしくなかった。
 主審も、もしかしたらそう感じていたのではなかろうか。
 もしVARがなかったら、PKにはならず、あのまま同点で試合は続いていたかもしれない。
 そのほうが、面白い決勝戦になったのではないか。
 でも、VARは、そこで「決勝戦で同点の場面だから」と忖度などしてくれないし、ああやって何度も映像で観てしまうと、主審もハンドと判定せざるをえない。
 あれは正しい判定だ。それはわかる、わかるのだけれど……

 人間の感情が試合をコントロールする時代は終わったのだ。
 今大会の主役は、VARだったのではないかと感じる判定だった。


 後半、観客が乱入してきて、フランスが3点目を入れてからは、なんだか雑な試合になってしまい、僕もビールを飲みながら観た。クロアチアとしては、とにかく点を取るしかないのだが、守りに集中したときのフランスは本当に堅い。
 そこで、フランスのGKのミスでクロアチアが1点を取り返し、2点差にまで詰めたのだが、このゴールに関しては、マンジュキッチの執念はすごかったけれど、GKの雑なプレーという印象が強かった。
 クロアチアは最後まで頑張ってはいたけれど、なんというか、頑張るために頑張った、という感じ。
 フランスは強かったし、クロアチアは頑張ったけれど、試合としては、「前半は、いや、あのVAR判定までは良かったんだけどね……」としか言いようがない。


 大会MVPにモドリッチが選ばれたのには、観ていてグッとくるものがあった。
 エムバペかな、と思っていたのが、若いプレイヤーのための賞に選ばれ、まさかダブル受賞かと思いきや、決勝で負けたチームからの選出。
 これはもう、この大会で大健闘したクロアチアに対する敬意、という意味もあったのだろう。
 壇上のモドリッチは、ゴールデンボールに輝いても複雑な表情をしていたけれど。
 それはもう、なんといっても、賞なんかもらえなくてもいいけど、勝ちたかったよね。
 クロアチアの選手たちがメダルをもらう時間になって、大粒の雨がスタジアムに降り注いできた。
 大雨のなか、ワールドカップのトロフィーを掲げるフランスの選手たち。
 この「ワールドカップに優勝した選手たちが、トロフィーを掲げるときの笑顔」は、どの大会でも、どの国でも、「成し遂げた人達の最高の表情」だな、といつも思う。
 とくにフランスを応援していたわけでもないのに、僕もつられて笑顔になってしまう。
 ああ、祭りが終わったな。
 なんのかんの言って、今回は人生でもっともワールドカップの試合をたくさん観た。
 決勝も祝前日の夜という、絶好の時間帯だったものなあ。