午前中の仕事をようやく終えて、ニュースを見たら、「広島・新井引退発表」と。
正直、もしかしたら今年なのでは、とは思っていた。
でも、黒田さんからは「お前(新井選手)はボロボロになるまでやれ」と言われたのを知っていたし、ここ8月の終わりには4番に座ってホームランを打ち、昨日の試合でもショートを強襲するヒットを放っていた。
律儀でファンを大切にする新井さんのことだし、カープの営業的な面からも(冷静に考えてみれば、いまのカープは毎試合チケット争奪戦になるくらいなのだから、引退興行で稼ぐ必要なんてないのだが)、9月になっても引退発表がなければ、来年も現役を続けるはず、だと思っていた。いや、思いたかった。
昨日の試合でも、延長12回の裏に、ノーアウト1塁で堂林が送りバントを決めたときに、いちばん嬉しそうに背中をポンと叩いて、堂林をねぎらっていた。なかなかブレイクしきれない、カープのプリンス・堂林。注目されている選手でもあるし、バントのための代打というのは、本人にとっては悔しいところもあったのではないか。でも、新井さんは、そんな堂林に対して、「これがチームプレーだし、お前は良い仕事をしたよ」と、たぶん、手のひらで伝えていたのだ。そういえば、前に、堂林が二軍に落とされたとき、新井さんは「僕が代わりに二軍に行くわけにはいきませんか」と直談判した、というのも聞いた。新井さんは、堂林だけが特別なわけじゃなくて、バティスタや野間など、いろんな選手に、分け隔てなくフレンドリーに接して、ネタにしたりされたりし続けてきたのだ。
カープファンとしては、打撃成績以前に、新井さんがチームの精神的支柱としてベンチにいて盛り上げてくれて、代打でコールされたときに球場全体が沸き上がるだけでも十分で、まだ引退なんて早すぎるよ、と思っていた。
そういえば、今シーズンは、打率が2割2分、ホームランは4本だったんだよなあ。
成績だけみれば、「まだまだできる!」とか「引退には早すぎる!」とは言えなかったのだ。
恩師のひとりである山本浩二さんは「最高の引き際じゃないか」と仰っていたそうだ。
引退会見を受けてのネットでの反応をみていたら、「今年で引退するのではないかという予感はあった」という人が多かった。
僕自身も、そういう予感があったからこそ、新井さんが引退しない理由を拾い集めていたような気がする。
ここ数年は怪我もあったし、体調もけっして万全ではないまま、自分を追い込んでプレーしつづけていたのだろうし。
新井さんは、大ベテランであるにもかかわらず、ハードな練習をこなし、全力でプレーしていることについて聞かれて、「当たり前のことをやっているだけ」と、いつも答えていた。
新井さんにそんな姿を見せられては、若い選手たちが手を抜くわけにはいかないじゃないか。
新井さんが4年前に戻ってきたときには、「裏切者がどの面下げて戻ってきたんだ!」と憤っていた僕なのに、どんな選手でも、この日が来るのはわかっているのに、なんでこんなに寂しいのだろう。
あの新井さんがカープに帰ってきて、リーグ優勝を成し遂げて黒田さんと抱き合う姿を見ることになるなんて、2014年の9月の僕は想像もしていなかった。そんなのは、蜀が勝つ『三国志』みたいなものだ、SFだった。だが、そんな「マンガみたいなこと」が現実になり、そして、この夢に、ひとつの区切りが訪れようとしている。
なんとか、新井さんのユニフォーム姿を、もう一度、ナマで観たい。日本一で、新井さんのやり残したことを無くしてあげたい。
ただ、そう思いつつも、日本シリーズ前に黒田さんの引退が発表されたときのことを、ちょっと思い出してもいるのだ。
これって、チームにプレッシャーをかけすぎてしまうのでは……
カープもあれから勝ち続けることによって自信もつけてきたし、今年こそはなんとか!
新井さん、帰ってきてくれて、本当にありがとう。
寂しくなるけれど、現役最後の打席まで、応援します。
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