じっぽ当直日誌・スーパーマイルド@はてな

『さるさる日記』から続く、中年内科医の日常日記。これまでの分はこちら。http://touchoku.jugem.jp

武藤敬司さんのラストマッチを観た。


 何をやってもうまくいかない時期、というのはあるものだ。
 そういうときは、何かを積極的にやった方がいいのか、なるべく変なことはしないようにして、雨が止むのを待つ方がいいのか。
 僕の場合は、そういうときに、半ばヤケになって無駄遣いやネットに余計なことを書く、ギャンブルで大金を賭ける、などの問題行動を起こしがちなので、家で本を読むかゲームをしてやり過ごすように心がけている。それにしても、自分を苦しめていることの大部分は、自分で原因を作っているのだよなあ。

 プロレスラー・武藤敬司選手の引退試合。PPVのチケットを買ってテレビ観戦。
 実況で「猪木プロレスの終焉」と言っていたけれど、猪木さんも亡くなり、「闘魂三銃士」もこれで実質的にリングを離れる、ということになる。最後、蝶野正洋がリングに上がってきたのをみて、僕も目頭が熱くなった。なんだよ、もう歩くのすら大変そうじゃないか、武藤も、蝶野も。武藤は人工関節を入れてプロレスをやっている状態で、この引退試合でも、ムーンサルト・プレスを試みようとしてやめた場面が二度あった。三沢光晴さんや橋本真也さんが止めてくれたのではないか、とも思う。
 プロレスを見ていていつも思うのは、観客というのは我儘なもので、「そんなことをしたら死んじゃうよ!」とハラハラするようなギリギリの試合を求めているのに、レスラーが実際に大怪我をしたり命を落としたりすると「そこまでやることはなかったのに」と言うのだ。

 武藤対蝶野の勝負を「介護マッチ」と言った人がいたけれど、これ以上の幕引きはなかった。「引退試合」のカードが、武藤対蝶野で、両者がこのコンディションだったら、感傷的にはなるとしても、プロレスの試合としては寂しい内容になったはずで、セミファイナルでのオカダ・カズチカの容赦なさや対戦相手・内藤哲也のプロレスラーとしての円熟が、武藤の締めくくりを支えていた。
 昔、「アントニオ猪木は、相手がホウキでも面白いプロレスができる」と言われていたのを思い出す。最後の対戦相手に内藤を指名したときには、「うーん、ちょっと違うような」と僕も思ったのだけれど、武藤は、今の自分のコンディションでも、ちゃんと「面白いプロレス」にしてくれる相手として、内藤を選んだのだろう。

 PPVのチケットは、会場でもないのにけっこう高いな、とは思ったのだけれど、お金を払った分だけ真剣に観たし「推しに課金」みたいな喜びもあった気がする。

 武藤さん、本当におつかれさまでした。そして、完走できて、本当によかった。

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