じっぽ当直日誌・スーパーマイルド@はてな

『さるさる日記』から続く、中年内科医の日常日記。これまでの分はこちら。http://touchoku.jugem.jp

映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』と「伝説の王将戦」の終わり

 3月2回目の日曜日。
 夕方から、映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』を観に行った。明日がアカデミー賞の発表なので、最有力と目されている(その一方で、ネットで観た人のレビューでは賛否両論の)この作品を観ておこう、と思ったのだ。
 公開から今日まで何度も観に行こうと思ったのだが、仕事が終わった途端に、なんかあまり面白くなさそうだし、面倒だなあ、と先送りにしていたのだ。夏休みの宿題かよ。
 実際に観た感想としては、なぜこれがアカデミー賞なのか、という感じ。もっとも、最近のアカデミー賞受賞作って、「アカデミー賞じゃなかったら観なかった」という作品が多いし、あえてそういう作品をとりあげている面もありそうだ。去年の受賞作だって、みんな忘れているのではないか(ちなみに作品賞は『Coda コーダ あいのうた』)。


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 あえて言えば「女性の映画」「アジア系の登場人物」で、ポリコレ的に評価されているのかもしれないが、僕の感覚では「2世代前くらいの『中2病』『セカイ系』」なんだよなあ。ただ、最後まで観ると、なんか良いものを観たような気もしなくはない。つまらないプロセスを、なんとなくいい感じの終わりかたで誤魔化されてしまったような気もする。長いし。
 映画館を出て、クレーンゲームを少しやってみたが、うまく掴めたはずなのに景品は理不尽に落下し、建物から出たら激しい雨でびしょ濡れになった。
 
 王将戦は、これまでの5戦はずっと先手番が勝っていたのだが、第6局で藤井王将が後手から羽生九段に勝って王将位を防衛した。
 僕は、新たな手を模索しながら藤井王将と互角の勝負をしている同世代の羽生さんを応援していた。今の二人の年齢と最近の成績を考えると、羽生さんにとっては、藤井さんに勝てる、タイトル100期を達成できる最後のチャンスではないか、とも思っていた。
 でも、羽生さんは敗れてしまった。なんだか悔しい。むしろ、「これもまた将棋」と淡々として、次に活かそうとしている羽生さん自身よりも、僕のほうが、勝手に負けを悲しんでいるような気もする。
 羽生さんは、やっぱりすごい。僕が知る限り最強の棋士だった。伝説が新たな伝説に打ち負かされるのは、なんだかとても切ない。
 もちろん、羽生さんはこれで終わるわけじゃないし、藤井さんと戦ったことで、将棋への情熱が増したようにさえみえる。とはいえ、一人のファン、観客としては、「もう、このまま羽生さんの2勝3敗で、時が止まってくれないか」と思っていた。

 3月というのは、毎年、なんだかいたたまれない気分になってしまう。
 僕の場合、元気一杯の時期というのは存在しないのだとしても。


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