夜、『プロフェッショナル・仕事の流儀』を観た。
今夜は特別企画の「格差を乗り越えて走れ!伝説の名馬 オグリキャップ」だったのだ。
職業「競争馬」。
なぜ今、オグリキャップなんだろう?と思ったら、「二流の血統」とか「格差に負けず」みたいな語られかたで始まって、「いや、オグリは『そういうレッテル』みたいなのを超えた存在だったんだよ!」と言いたくなった。
でも、オグリキャップの評価額が500万円というのは、この血統を考えると、けっこう高値だったようにも思う。やはり「良い馬」だったのか、当時の日本は景気が良くて、馬の値段が全体的に高かったのか。
笠松でのマーチトウショウとの一騎打ちの映像をはじめて観たのだけれど、オグリキャップの勝負根性を感じさせるレースだった。ハナ差だったけれど、絶対に負けない、という気迫が伝わってくるのだ。
まあ、こちらは結果を知って観ているから、というのもあるんだろうけどさ。
岡部幸雄元騎手が、オグリキャップのことを「大レースでも、いつも通り、淡々と仕事をする馬だった」と振り返っていた。
周囲の人はあんなに興奮していたのに。
G1になると結果が出ない馬っていうのは、雰囲気に呑まれるというか、なんか普段と変わってしまうんだろうなあ。
最近では、サトノアラジンとか、ルージュバックとか……
僕も緊張しやすい人間なので、感情的には共感してしまうのだが、馬券的には困る。
競馬新聞には「G1での緊張しやすさ」なんて書いてないし。
それにしても、引退した年の秋の天皇賞とジャパンカップの惨敗したレースをみると、これで有馬記念で巻き返すとは思えないよなあ。
武豊騎手も「有馬記念前の調教に乗ったときには、本来の力を出すのは難しいかな」という印象だった、と語っている。
でも、有馬記念のパドックの映像をみたら、たしかに気合いが乗って、いい雰囲気ではあった。
あの有馬記念、勝ったオグリキャップの名前を、実況アナウンサーは「スーパーホースです!オグリキャップです!」と絶叫した。レース結果を読み上げる、鈴木淑子さんの声が震えていた。スタンドからは、地鳴りのような「オグリコール」がわき上がった。
大川さんの「ライアン!」も久々に聞いたなあ。
しかし、あらためて思うに、このレースのとき、馬券を買える年齢じゃなくてよかった。
絶対、オグリの馬券は買えてないと思うから。
あの有馬記念から、もう27年も経ったのか……
僕は一度、北海道・新冠の優駿スタリオンステーションへ引退後のオグリキャップに会いに行ったことがある。
雪は深いし電車は来ないし、遭難しかけながらたどりついた牧場には僕以外に誰もおらず、すっかり白くなったオグリキャップと二人(?)きりの時間を過ごしたのだよなあ。
いつか、G1馬の血統表の片隅に「オグリキャップ」の名前を見つけて、目を細める日が来る……可能性は低そうなんだけど、そういう夢をみるのもまた、競馬なのだろう。
三浦九段が復帰戦で羽生三冠と対戦。午後10時45分に131手で、羽生三冠が勝ったとのこと。
対局前、三浦九段自身の希望で、金属探知機によるボディチェックが行われたそうだが、それに対して、羽生さんも「同じ条件で勝負したいから」と、同じように探知機でのボディチェックを受けたそうだ。
羽生さんや武豊さんをみていて感じるのは、彼らは実績的に第一人者であるだけでなく、自らに「周囲の見本となるように振る舞うこと」を課している、ということだ。
それは、「ただ勝てばいい」という姿勢でいるより、はるかにキツいことだと思う。
そして、だからこそ、彼らは「特別」なのだ。
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