じっぽ当直日誌・スーパーマイルド@はてな

『さるさる日記』から続く、中年内科医の日常日記。これまでの分はこちら。http://touchoku.jugem.jp

「自分がどう思うか」を大事にするよりも、「みんながどう思うか」を類推できるほうが、生きていくには有利ではあるのだよなあ。


 アメリカの製薬会社「ファイザー」が、ドイツの「ビオンテック」と共同開発している新型コロナウイルスのワクチンが、臨床試験の最終段階の暫定評価で90%以上の予防効果があったと発表された。
 このニュースのおかげで、日本の株価はさらに上昇。JALANAも大幅に値上がり。まあ、値上がりしたといっても、コロナ前の株価に比べたら、まだまだ安いのだけれど。
 これは良いニュースではあると思うのだが、まだ「臨床試験の最終段階の暫定評価」の段階であり、効果や副作用については、「とりあえずここまではうまくいっている」だけでしかない。かなり低い温度で輸送しなければならない、という話もあるし、順風満帆にいくことを期待はしつつも冷静に見守る、くらいのスタンスでちょうど良いのではなかろうか。
 そもそも、航空会社に関しては、乗客がみんなワクチンを打って乗っているかなんてわからないし、ワクチンを打たないと搭乗できない、なんてことにはならないだろうから、新型コロナが収束に向かうとしても、そう簡単に需要が回復するとは思えない。
 それでも、みんなが「ワクチンができそうだからJALは『買い』だ!」と判断すれば、株価は上がるし、そういう世間の反応を一歩先に予測できた人は大きく稼ぐことができる。大概は、みんなが「買い」だと言っている頃には、買うべきタイミングは終わっていて、高値で買ったところで梯子を外されて暴落し大損、ということになるのだが。アンジェスにしても、今回のワクチンバブルにしても、「これに即座に反応するのは危険」だと僕の理性は叫んでいるのだが、結局のところ、「自分がどう思うか」を大事にするよりも、「みんながどう思うか」を類推できるほうが、生きていくには有利ではあるのだよなあ。
 しかし、コロナで仕事がなくなった、経済的に困っている、という話をよく聞く一方で、投資したい、投資できるお金がある人たちがこんなに大勢いるというのはイビツには感じる。ネットで見かけた情報なので、本当かどうかはわからないのだが、日本で年収1億円をこえる人の50%以上が「投資家」なのだそうだ。勤め人や中小企業の経営者レベルでは、年収1億円はまず無理だ。医者というのも平均年収は高いイメージがあるかもしれないが、勤務医の年収は高くて2000万円くらいのものだ。おまけにずっと公立病院に勤めているのでもなければ、まとまった退職金もないことがほとんどなので、ものすごく稼げる、というわけではない。『美味しんぼ』的に言えば、いつでもトンカツを躊躇無く食べられるくらいのお金はあるとしても。
 カープ鈴木誠也選手が、3打数3安打で5年連続の3割を達成した。前日は2割9分5厘で、さすがに3の3は厳しいだろうと予想していたのだが、それを見事にやってのけるのがスーパースターというものなのか。すごい集中力とプレッシャー耐性。カープファン的には「全集中したらこんなに打てるんだったら、ペナントレースのもっと良いところで打ってほしかった……」と言いたいが黙っておく。書いたけど。